【病態別のお話】第1回:視床出血
- 株式会社 MARUHA MEDICAL
- 1月7日
- 読了時間: 8分

はじめに:なぜ、視床出血の回復には「別のカレンダー」が必要なのか
今日から数回に分けて、脳卒中の種類ごとに、リハビリの現場で私が感じていること、そして知っておいていただきたい大切な事実についてお話ししていきたいと思います。
第1回目は、脳出血の中でも比較的多く、そして非常に複雑な回復のプロセスをたどることが多い「視床(ししょう)出血」についてです。
視床は、脳のほぼ中心に位置する「中継センター」のような場所です。
全身から送られてくる感覚情報や、体を動かそうとする指令、さらには感情や意識に関わる情報までがすべてここを通って、それぞれの専門部署へと送られます。
いわば、身体という巨大な組織をつなぐ「メインサーバー(情報統括センター)」のような役割を担っています。
ここで出血が起きた時、直面するのは「手足の動く機能」の低下だけではありません。
意識の低下、耐えがたい痛み、あるいは自分の体の位置が分からなくなるといった、全身のネットワークが混乱することで起こる多彩な症状に、多くの方が翻弄されることになります。
そして、この「視床」という場所の特性が、病院のリハビリ制度の中で、時として大きな「壁」になってしまうことがあります。
1. 「情報の統括センター」が受けるダメージの深さ
視床出血の大変さは、単に「どこかの神経が切れた」というだけでは説明できません。
たとえ手足そのものの機能や、脳の個別の領域にダメージがなかったとしても、それらをつなぐ「中継地点」が誤作動を起こすと、体全体がパニックに陥ります。
情報の受け取りミス: 外からの刺激を正しく受け取れず、少し触れられただけで激痛として感じてしまう(視床痛)。
指令の空回り: 頭では「動け」と思っているのに、その信号が末端まで正確に届かず、意図しない動き(不随意運動)が出てしまう。
自分の居場所の喪失: 自分の腕がどこにあり、どんな形をしているのかという感覚が脳に届かず、まるで自分の体ではないような疎外感を感じる。
このように、視床出血は身体のあらゆる場所で「誤作動」が起きる病気です。
この目に見えない「ネットワークの混乱」こそが、リハビリを難しく、そして時間を要するものにしている正体なのです。
2. 医療の現場で語られる「6ヶ月」という数字の裏側

よく病院やリハビリの現場では、「脳卒中の回復の9割は、発症から6ヶ月で決まる」といったお話を聞くことがあるかもしれません。
確かに、統計データを見れば、手足の動きそのもの(身体の機能面)は、その時期に一定の落ち着きを見せることが多いのは事実です。
多くのガイドラインも、この数字をもとにリハビリの期間を設定しています。
ですが、視床出血を経験された方にとって、この数字をそのまま自分に当てはめて、「もうここから先はない」と決めつけてしまうのは、少し早いかもしれません。
なぜなら、視床出血の方は、先述したような複雑なネットワークの混乱に加え、意識のレベルが戻るのに時間がかかったり、脳のむくみ(脳浮腫)が非常に長く続いたりする傾向があるからです。
脳が一生懸命に腫れを引き、再起動の準備をしている間は、本格的なリハビリを行いたくても、身体がまだそれを受け入れる状態にありません。
視床出血の方の脳は、いわば「深い冬眠」をしているような期間が、他の病態よりも長くなることが少なくないのです。
3. 医療制度のカレンダーと、脳回復のカレンダーのズレ
ここに、今の日本の医療制度の難しい問題があります。
国が定めている「回復期リハビリテーション」の期間には、一日のリハビリ時間や、入院できる日数にルールがあります。
しかし、視床出血の方のように、情報の統括センターが再起動するまでに時間がかかる場合、ようやく意識がはっきりして「さあ、これから身体を動かしていくぞ!」というタイミングが来た時に、すでに病院の期限が迫っていたり、入院期間が終わりを迎えたりすることが現実的に起こり得るのです。
本来であれば、意識が戻り、ネットワークが繋がり始めた時期にこそ、丁寧な刺激や具体的な動作の練習が必要なのですが、制度の枠組みの中では、その「一番いい時期」に十分な量のリハビリを受けられないという、もどかしい状況が生まれるケースがあります。
そのまま「6ヶ月が過ぎたから、もうこれ以上の改善は難しいですね」という一般的なスタンスで見守られると、せっかくこれから動き出すはずだった回復のきっかけが、十分にいかされないままになってしまう……。
これは、現場にいる専門職として、非常に心が痛む場面でもあります。
4. 「9割」の外側にある、もう一つのリハビリテーション

では、視床出血後の回復は、本当にそこで止まってしまうのでしょうか。
私の経験上、それは「一概には言えない」というのが正直なところです。
世の中には、車椅子だと言われた方が自分の足で歩けるようになる様な事例もあります。
そうしたお話の多くは、実はこの「6ヶ月」というカレンダーを超えた先で起きています。それは魔法ではなく、脳の再起動がゆっくり、でも着実に続いていることの証です。
大切なのは、身体の機能面(手足がどれだけ単独で動くか)が一定のところに達した後に、それを実際の生活の中でどう使いこなしていくかという「能力」の部分に目を向けることです。
視床出血の方は、全身のセンサーが誤作動を起こしているため、ただ筋肉をつけるトレーニングをしてもなかなか歩けるようにはなりません。
混乱している感覚情報を、どうやって一つずつ「整理」していくか。
鈍くなってしまった感覚、過敏になってしまった感覚の中で、残されたわずかな「正しい情報」をどう脳に届け直すか。
バラバラになったネットワークを、今の生活環境の中でどう再構築していくか。
こうしたアプローチは、非常に根気と、そして専門的な経験を必要とします。
ガイドライン通りのリハビリだけでは届かない、もっと個別の、お一人おひとりの脳の状態に合わせた「オーダーメイドの関わり」が必要になるのです。
5. 信頼できる「伴走者」と歩むために
もし、あなたが今、あるいはあなたのご家族が、「病院の期限が来たけれど、回復の可能性はまだ残されているのではないか」という思いを抱いているのなら、そのお気持ちは大切にしてほしいと思います。
もちろん、リハビリには「やれば必ず改善する」という保証はありません。
期待しすぎてしまうことが、時に自分を苦しめてしまうこともあるでしょう。
回復には個人差があり、思い通りにいかない現実も受け止めていく必要があります。
けれど、これからの長い生活を支えていくためには、ただ「無理」と諦めるのではなく、今の状況に寄り添い、希望と現実のバランスを一緒に取ってくれる専門家の存在が、心の拠り所になるはずです。
9割のデータだけを見て可能性を閉ざさない。
今の身体の機能を使って、生活の中でどんな「新しい工夫」ができるかを知っている。
制度の壁を超えて、今の時期に本当に必要な、ネットワークを整えるための刺激を提案できる。
そんな、広い視点と経験を持った理学療法士やセラピストを、ぜひ探してみてください。
すぐに結果が出なくても、あなたが前を向いて歩もうとする道のりを、専門的な知識で支えてくれる「伴走者」に出会うことが、予後をより良いものにする大きな手助けになります。
おわりに:期待と不安の間で、一歩ずつ
視床出血は、身体全体の司令塔が傷つく、命に関わるダメージの大きな病気です。回復に時間がかかることも、全身の誤作動に悩まされる日があることも事実です。
けれど、脳のカレンダーは制度のカレンダーとは違います。 適切な時期に、適切な刺激を送り続けることができれば、脳は必ず新しいネットワークを繋ぎ直そうとします。
「もう期限だから」 「統計ではこうだから」 そうした言葉だけで、すべてを諦めてしまう必要はありません。
まずは、あなたの今の状態を正しく理解し、これから先の未来にどんな手立てがあるのかを、経験豊富な専門職と一緒に、ゆっくりと話し合ってみてください。
焦る必要はありません。期待しすぎず、でも諦めず。あなたの脳が準備を整えたその時から、新しい生活への一歩は、何度でも始められるのですから。
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