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「もっと動かないと」の言葉に隠れた愛情と、時間をかけて育つ新しい体
励ましの言葉が、時に少しだけ重くなる理由 穏やかな午後のひとときや、夕食を囲む団らんの時間。何気なくかけられた「もっと動かないと」「リハビリ頑張らないとね」という言葉やそんな雰囲気に、ふと会話が止まることはありませんか。 言葉を受け取るご本人は、周囲に悪気がないことを誰よりもよく分かっておられます。 心配し、一日も早く良くなってほしいという純粋な願いから出た言葉であることも、痛いほど伝わっているはずです。 それでも、その言葉が今の自分には少しだけ重すぎて、まっすぐに受け止めきれない日があるのもまた、ごく自然な感情です。 一方で、一番近くで見守るパートナーやご家族にとっても、大切な人がもどかしそうにしている姿を見るのは胸が痛むものです。 何かできることはないか。 その強い愛情と祈りが、時に「もっと動かないと」という励ましの言葉に形を変えて表れます。 誰も悪くないからこそ、お互いに少しだけ息苦しくなる時があるのです。 これは、多くのご家庭で直面する大切な通過点でもあります。 脳卒中後の体は、1年目・2年目・3年目でこう変わる もし、ご家族がこの記事を
6 日前


脳卒中後遺症の痙性、朝に症状が強くなる理由とリハビリの工夫
毎朝の「最初の一歩」がうまく出ない、そのもどかしさ おはようございます。朝、目が覚めて窓から差し込む光を感じたとき、今日という一日の始まりに少しの不安を抱くことはありませんか。 「今日も体が重いな」「トイレに行きたいけれど、最初の一歩がうまく出ないな」。 お布団から出ようとする瞬間、自分の意志とは裏腹に体の一部が石のように硬く感じられ、動き出すまでに時間がかかる。 そんなもどかしさと孤独な戦いを、毎朝続けておられる方は決して少なくありません。 なぜ朝は体がガチガチになるのか。眠りと姿勢の関係 なぜ、朝目覚めたときに体がガチガチに固まった状態になるのでしょうか。 それは、私たちが眠っている間の「姿勢」と、体の仕組みに理由があります。 脳卒中の後経験には、「痙性(けいせい)」と呼ばれる筋肉のつっぱりが現れることがあります。 日中、起きている間は、姿勢を意識したり、さまざまな工夫を重ねることで、そのつっぱりをある程度和らげ、動きやすくする対策をとることができます。 しかし、夜寝ている間は無意識の時間です。自分で意識して姿勢を直すことができません。...
4月24日


【病態別】第15回:意識が鮮明だからこその葛藤。脊髄梗塞と向き合い、自分らしい生活を取り戻すための歩み
脊髄梗塞の症状と麻痺のタイプを知る 脊髄梗塞は、脳梗塞などと比べると発症の頻度は高くありませんが、ある日突然、日常生活が一変するという点では共通しています。 しかし、リハビリの進め方や患者様が抱える心の葛藤には、この病気特有の難しさが存在します。 まずは、脊髄梗塞による症状について整理していきましょう。 この病気は、梗塞が起こった脊髄の場所によって、現れる麻痺の形が大きく異なります。首に近い場所(頸髄)で梗塞が起こると、両手と両足のすべてに麻痺が生じる四肢麻痺の状態になることがあります。 一方で、胸から下の場所(胸髄や腰髄)であれば、手や腕の機能は保たれますが、腰から下が動かなくなる対麻痺という状態になります。 また、血管の詰まり方や場所によっては、体の片側だけに症状が強く出ることもあります。 ご自身やご家族の麻痺がどのようなタイプなのかを正しく把握することは、今後の生活を見据えたリハビリの目標を立てる上で非常に重要です。 脊髄梗塞の特有の心理的な苦しさ 脊髄梗塞の最大の特徴は、脳の機能には全く影響が及ばないという点にあります。...
4月17日


【病態別】第14回:くも膜下出血のリアルと向き合う。長期戦のマラソンを共に走るチームとして
ある日突然、バットで殴られたような激しい頭痛に襲われる。 昨日までの穏やかで当たり前だった日常が何の予告もなく途切れる。 くも膜下出血は、発症したご本人はもちろんのこと、支えるパートナーやご家族の人生にも想像を絶する衝撃をもたらす疾患です。 命の危機を脱した直後から、ご家族は横たわるご本人を目の前にして、「これからどうなるのか」「どう支えていけばいいのか」と、終わりの見えない不安の中で必死に情報を探されていることと思います。 これまでの連載で、脳卒中には大きく分けて「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3種類があるとお伝えしてきました。 その中でもくも膜下出血は、他の2つとは明確に区別して理解する必要があります。 脳梗塞とくも膜下出血の違い 脳梗塞が血管の詰まり、脳出血が脳の中の細い血管の破れであるのに対し、くも膜下出血は脳の表面を覆う膜の隙間にある動脈瘤などが破裂して起こります。 発症と同時に脳全体に強いダメージが及ぶため、非常に致死率が高く、命を落とすリスクが極めて高い病気です。 そして、懸命な治療で命を取り留めた後の経過には、実は非常に大き
4月13日


【病態別】第13回:大脳基底核(尾状核・淡蒼球・視床下核)が握るリハビリの鍵。
これまで、この連載では「被殻」や「視床」といった、脳卒中で比較的多く耳にする部位について解説してきました。これらは出血や梗塞の好発部位であり、麻痺や感覚障害に直結する場所です。 しかし、実際にはそれ以外の「さらに深い場所」がダメージを受け、症状に戸惑うケースも少なくありません。 「麻痺は軽いと言われたのに、なぜか自分から動こうとしない」 「急に手足が勝手に動いてしまう(不随意運動)」 「体が異常に固くなって、思うように動かせない」 これらの症状は、一般的なインターネットの検索ではなかなか明確な答えに辿り着けません。 今回は、大脳基底核という括りの中でも、特に「影の主役」である部位にスポットを当て、その役割とリハビリの考え方を紐解いていきます。 1.尾状核(びじょうかく):意欲を司る「心のエンジン」とサポーターの力加減 尾状核は、運動のコントロールだけでなく、人間の「意欲」や「計画性」に深く関わっています。 ここは、脳の中で「報酬」や「やる気」を処理する回路の重要な中継地点です。 ここが損傷を受けると、たとえ手足に強い麻痺がなくても、「自分から動こ
4月3日


【病態別】第12回:橋(きょう)出血・梗塞 頭ははっきりしているのに。声なき声に寄り添い続けるご家族へ
はじめに:考えや感情は、病気になる前と全く同じです 病態別にお話しする連載も、第12回を迎えました。今回は、脳の幹にあたる部分、橋(きょう)のダメージについて取り上げます。 脳卒中と聞くと、多くの方がまず第一に、半身が動かなくなる片麻痺を想像されます。 それに加えて、物事が考えられなくなるのではないか、認知症のようになるのではないかという不安を抱かれます。 確かに、脳の表面にある大脳皮質という場所が傷つくと、そういった症状が出ることがあります。 しかし、今回お話しする橋というピンポイントの部位にダメージを受けた場合、物事を考える脳の機能は一切ダメージを受けていません。 ご本人の頭の中は完全にクリアであり、感情も、思考も、病気になる前と全く同じです。 それなのに、口を動かす筋肉が麻痺してうまくしゃべれなかったり、手足の重い麻痺によって身動きがとれなかったりします。 頭ははっきりしているのに、自分の意思を外に伝える手段だけが奪われている。 これは、ご本人にとって想像を絶するもどかしさと葛藤を伴います。 だからこそ、ご家族と私たち専門職がタッグを組み、
3月27日


【病態別】第11回:延髄出血・梗塞 食べる喜びと見えない危険。嚥下と自律神経の障害と闘うご家族へ
はじめに:むせるのも、熱が出るのも、脳がそうさせているのです 病態別にお話しする連載も、第11回を迎えました。今回は、脳の根元にある生命維持の要、延髄(えんずい)のダメージについて取り上げます。 厳しいリハビリを懸命に乗り越え、待ちに待った退院の日を迎えることができた。 しかし、家に帰ってからの生活の中に、ご家族にとって非常に緊張を強いられる、危険がいくつも潜んでいます。 お茶を飲むとむせ込む、お風呂に入る時温度がわからない。 そして、夏の暑い部屋にいると急に高熱を出し、冬の寒い部屋では極端に体温が下がっていく。 どうしてこんなにむせるの。なぜただ部屋にいるだけで熱が出るの。 そんな行き場のない不安と疲労を抱えるご家族に、お伝えしたいことがあります。 ご本人は決して、慌てて食べているわけでも、体調管理ができていないわけでもありません。 延髄という場所が傷ついたことで、飲み込みのスイッチや、体温を調整する自律神経のケーブルが、病気の影響でお休みしている状態なのです。 延髄の役割:飲み込む司令塔と、全身への命令ケーブル 私たちの脳の最も深い場所、首の
3月23日


【病態別】第10回:後頭葉出血・梗塞 見えない半分と生きる。不安に涙するご本人とご家族へ
はじめに:大げさではありません。本当に見えなくて、心細いのです 病態別にお話しする連載も、今回で第10回を迎えます。 今回は、頭の後ろ側にある脳の領域、後頭葉(こうとうよう)のダメージについて取り上げます。 リハビリ病院で訓練を重ね、無事に退院の日を迎えることができた。 病院では見えない側を意識する練習をしっかり行い、ご本人も自分は右半分が見えにくいという自覚を持っています。 それなのに、いざ実際の家に帰って生活を始めると、病院ではできていたはずの動作でエラーが増えていきます。 狭い廊下で同じ側の壁や家具に肩をぶつける。 食事の時も、お皿の片側にあるおかずを残す。歩くことを極端に不安がり、すり足で少しずつしか進まない。 そんな怯え、時に心細さから涙ぐむ姿を見て、ご家族は深く傷つき、どう接していいか分からなくなることが多くあります。 病院ではあんなに上手に歩いていたのに。そんな行き場のない悲しみを抱えるご家族に、まず最初にお伝えしたいことがあります。 ご本人は決して、大げさに怖がっているわけでも、注意力が足りないわけでもありません。...
3月12日


【病態別】第9回:側頭葉・前頭葉出血・梗塞(左側) 言葉が通じない?見えない壁と闘うご家族へ
はじめに: 言葉を忘れたのではなく、翻訳機が休業しているのです 病態別にお話しする連載の第9回目は、言葉の壁となる失語症を引き起こす、左側の側頭葉(そくとうよう)や前頭葉のダメージについて取り上げます。 手足のリハビリを頑張り、無事に退院を迎え、一緒に家に帰ることができた。 それなのに、いざ生活の中で会話をしようとすると、決定的な違和感に直面します。 言いたいことが言葉にならない。相手の話しかけている意味が分からない。 言葉のキャッチボールが成立しないという見えない壁の前に、ご家族は深い悲しみと孤独を抱えることになります。 どうして話が通じないの。あんなに楽しくおしゃべりしていたのに。そんな絶望の淵にいるご家族に、まず最初にお伝えしたいことがあります。 ご本人は、あなたへの愛情や、これまでの思い出を忘れたわけではありません。 頭の中にある想いを言葉に変換する、あるいは相手の言葉を意味として受け取る翻訳機が、病気の影響で休業している状態なのです。 失語症の3つのタイプ:表出と理解の壁 失語症には、大きく分けて3つの種類があります。...
3月9日


【病態別】第8回:前頭葉の出血・梗塞 性格が変わった?見えない障害と闘うご家族へ
はじめに: 怠けているのではありません。脳がそうさせているのです 病態別にお話しする連載の第8回目は、おでこの奥にある大きな脳の領域、前頭葉(ぜんとうよう)のダメージについて取り上げます。 手足の麻痺は少しずつ良くなり、無事に退院の日を迎えることができた。 それなのに、家に帰ってからの様子がなんだかおかしい。 一日中ぼーっとテレビを見ているだけで、自分からは何もしようとしない。 ちょっとしたことで急に激高し、大声を荒げる。 これまで当たり前にできていた料理の段取りが全く組めず、パニックに陥る。 まるで別人のように性格が変わった姿を見て、ご家族は深く傷つき、どう接していいか分からなくなることが多くあります。 なんで怠けているの。 昔はあんなに優しくて、気配りのできる人だったのに。 そんな行き場のない悲しみを抱えるご家族に、お伝えしたいことがあります。 ご本人は決して、わざとやっているわけではありません。 性格が悪くなったわけでも、怠けているわけでもないのです。 前頭葉という場所が傷ついたことで、心と行動をコントロールする機能が、お休みしている状態な
3月6日


【病態別】第7回:頭頂葉出血・梗塞(右側) 見た目は元気なのに左側だけぶつかる。空間が消える落とし穴
はじめに:不注意ではありません。本当に見えていないのです 病態別にお話しする連載の第7回目は、 頭頂葉(とうちょうよう)のダメージで起こりやすい、 半側空間無視(はんそくくうかんむし)について取り上げます。 この障害には、非常に恐ろしい落とし穴があります。 それは、手足の麻痺がほとんどなく、 言葉も普通に話せるケースが多いことです。 はたから見れば、すっかり元通りになったように見えます。 しかし、なぜか歩くと左側の壁や家具に何度もぶつかる。 食事の時、お皿の左半分だけおかずを綺麗に残してしまう。 左側から家族が優しく声をかけても、全く気づいてくれない。 こうした姿を毎日見ていると、ご家族はつい、 もっと注意して周りを見てよ、と怒ってしまいがちです。 何度も同じ失敗を繰り返す姿に、 わざとやっているのではないかと悲しくなることもあるでしょう。 しかし、ご本人は決して怠けているわけではありません。 ご本人の世界からは、 本当に左側の空間がすっぽりと消滅してしまっているのです。 頭頂葉の役割と、空間が消えるメカニズム 左半側空間無視は、主に右側の頭頂葉
2月27日


【病態別】第6回:小脳出血(しょうのうしゅっけつ) 力はあるのに、なぜ世界は回るのか?精密機械の故障と、数年がかりのチューニング
はじめに: 筋肉はある、でも立てないという恐怖 病態別にお話しする連載の第6回目は、小脳出血を取り上げます。 これまでお話ししてきた脳出血(被殻や脳幹など)では、手足が動かなくなる麻痺が最大の悩みでした。 しかし、小脳出血の患者さんが直面する現実は、それとは全く質の異なる恐怖です。 ベッドの上で手足を動かしてみると、力はある。蹴る力も、握る力も残っている。 これなら歩けるかもしれない。 そう思って立ち上がった瞬間、世界がぐにゃりと歪み、自分の身体がまるで荒波に浮かぶ小舟のように制御不能になる。 これが、小脳出血特有の運動失調(うんどうしっちょう)です。 筋力低下ではなく、コントロール不全。 力があるだけに、余計に自分の身体が自分のものでなくなったような、深い絶望感を感じやすい病態でもあります。 今回は、この見えない精密機械の故障と、そこから再び地面を踏みしめるまでの道のりについて、深くお話ししていきます。 小脳の役割:舞台裏の演出家 小脳は、脳の後ろ側、脳幹の背中に張り付くように位置しています。 ここは、筋肉に動け!と命令する場所(司令塔)ではあ
2月27日


【病態別】第5回:放射冠・内包(ほうしゃかん・ないほう) 脳のダメージは小さいのになぜ動かない?情報の高速道路の正体
はじめに: 最も納得がいかないと言われる場所 病態別にお話しする連載の第5回目は、放射冠や内包について取り上げます。 病院で、出血した範囲はごくわずかですよ、と説明を受けたのに、実際には手足が全く動かない。 そんな経験をされている方は多いのではないでしょうか。 その原因の多くは、ダメージを受けた場所が情報の通り道である放射冠や内包だからです。 放射冠・内包とは何か:神経の関所 脳の表面(大脳皮質)で作られた、動け!という命令は、一本の束にギュッと集まって首の方へ降りていきます。 ・放射冠:脳の表面から神経が集まってくる扇の要のような場所 ・内包:その神経がさらに一箇所に固まって通るトンネルのような場所 これまでの視床や被殻が、情報の処理や調整を行う司令塔や工場だとしたら、放射冠や内包はそこから伸びる電線や情報の高速道路です。 なぜここは麻痺が重くなりやすいのか 工場が少し壊れても他のラインで代用できますが、電線は一箇所でも断線すれば、その先にある手足は一切点灯しません。 内包、特に後脚と呼ばれる場所は、全身の運動神経が驚くほど狭い範囲に密集して通
2月12日


【病態別】第4回:脳幹出血(橋出血など)|命のスイッチを再起動し、再び自分の身体を取り戻すまで
はじめに: 生命の源、脳幹での出血 連載の第4回目は、脳出血の中でも最も重篤な経過を辿ることが多い脳幹(のうかん)出血を取り上げます。 脳幹は、大脳のさらに奥、首の付け根に近い場所に位置する、親指ほどの太さしかない部位です。 ここには、私たちが人間として生きていくための「根っこ」の機能が凝縮されています。 ここでの出血は、命に関わる大きな事態であると同時に、回復のプロセスも非常に特殊です。 1.片麻痺の常識が通用しない脳幹の特殊性 なぜ脳幹の出血が、これほどまでに重い症状を引き起こすのでしょうか。 通常、脳からの運動指令は延髄(えんずい)の最下部にある錐体交叉(すいたいこうさ)という場所で左右が入れ替わります。 これによって右脳は左半身を、左脳は右半身を動かしています。 しかし、その手前にある橋(きょう)や延髄は、左右両方の手足に繋がる神経の束が、極めて狭い範囲に密集して通っています。 そのため、たとえ小さな出血であっても、この「神経の高速道路」を丸ごと遮断してしまい、左右どちらか一方ではなく、全身が動かなくなる四肢麻痺(ししまひ)に近い状態にな
1月29日


【病態別】第3回:皮質下出血|見えない障害と向き合い、家族で歩む長期戦の心得
はじめに: 皮質下出血とは何か 病態別にお話しする連載の第3回目は、皮質下(ひしつか)出血を取り上げます。 第1回の視床出血、第2回の被殻出血が脳の深い場所での出来事だったのに対し、皮質下出血は脳の表面に近い場所で起こる出血です。 この病態の最大の特徴は、出血する場所(前頭葉、頭頂葉など)によって現れる症状が全く異なる点です。 手足は比較的よく動く一方で、性格が変わったように見えたり、判断力が落ちたり、空間を正しく認識できず物にぶつかったりといった高次脳機能障害が前面に出やすいのが特徴です。 周囲からは一見分かりにくい生活のしにくさに、ご本人もご家族も翻弄されやすい場所でもあります。 1.動けるから大丈夫という言葉の落とし穴 皮質下出血の方は、病院の評価では自立や軽症と判断され、早期に退院となることも少なくありません。 しかし、本当の戦いは自宅に戻ってから始まります。 手足は動くのに、なぜか料理の手順を間違える。歩けるのに、左側の壁に何度も肩をぶつけてしまう。 穏やかだった人が、急に怒りっぽくなった。 こうした症状は、目に見える麻痺よりもずっと、
1月29日


【病態別】第2回:被殻出血|最も多い脳出血から、どうやって生活の動きを取り戻すか
はじめに:脳出血の約4割を占める被殻出血を知る 病態別にお話しする連載の第2回目は、脳出血の中で最も発症割合が高いと言われている「被殻(ひかく)出血」です。 統計的には脳出血全体の約40パーセントから50パーセントを占めるとされており、リハビリの現場で私たちが最も多く出会う病態でもあります。 被殻という場所は脳の深いところにあり、主に運動のコントロールを司っています。 ここに出血が起きると、反対側の手足に麻痺が出たり、言葉が出にくくなったり、あるいは高次脳機能障害を併発することがあります。 医療的な事実と回復の一般的な流れ まずは、一般的な医療の視点から見た特徴を整理します。 被殻出血の症状の重さは、出血の量によって決まります。 少量であれば保存療法が選択されますが、出血量が多く脳を強く圧迫している場合は、血腫を取り除く手術が行われることもあります。 手足の動く機能(身体の機能面)の回復については、やはり発症から3ヶ月から6ヶ月までが最も変化が出やすい時期とされています。 しかし、被殻出血においては、この機能的な回復の後に、もう一つの大きな回復の
1月16日


脳梗塞で幻覚・妄想が起こる原因とは?症状の特徴とリハビリ・治療方法を専門家視点でわかりやすく解説
脳梗塞の後遺症と聞くと、手足の麻痺や言語の障害が思い浮かびやすいですが、実は「幻覚」や「妄想」といった精神症状が現れることも珍しくありません。 突然見えないものが見えたり、事実と異なる思い込みが強くなったりすると、本人は大きな不安を抱え、家族もどのように接すればよいか迷ってしまいます。 しかし、これらの症状は脳の損傷によって起こる“高次脳機能の乱れ”であり、適切な理解と対応があれば落ち着いていくことが多い症状です。 この記事では、脳梗塞後の幻覚・妄想の原因、治療・リハビリ、家族の適切な対応方法までをわかりやすく解説します。 脳梗塞と幻覚・妄想の関係を理解する 脳梗塞の発症後、一部の方に幻覚や妄想といった精神症状が現れることがあります。 身体の後遺症が注目されやすい一方で、脳の損傷によって「認知」「思考」「感情の安定」に影響が起こると、現実との境界が揺らぎ、見えていないものが見える、事実と異なる思い込みを強く持つといった状態が生じます。 これは決して珍しいことではなく、特に急性期〜回復期初期にかけて多く見られます。 また、症状は一時的であることも多
1月16日


【病態別】第1回:視床出血|「リハビリの期限」に、あなたの体の可能性を閉じ込めないために
はじめに:なぜ、視床出血の回復には「別のカレンダー」が必要なのか 今日から数回に分けて、脳卒中の種類ごとに、リハビリの現場で私が感じていること、そして知っておいていただきたい大切な事実についてお話ししていきたいと思います。 第1回目は、脳出血の中でも比較的多く、そして非常に複雑な回復のプロセスをたどることが多い「視床(ししょう)出血」についてです。 視床は、脳のほぼ中心に位置する「中継センター」のような場所です。 全身から送られてくる感覚情報や、体を動かそうとする指令、さらには感情や意識に関わる情報までがすべてここを通って、それぞれの専門部署へと送られます。 いわば、身体という巨大な組織をつなぐ「メインサーバー(情報統括センター)」のような役割を担っています。 ここで出血が起きた時、直面するのは「手足の動く機能」の低下だけではありません。 意識の低下、耐えがたい痛み、あるいは自分の体の位置が分からなくなるといった、全身のネットワークが混乱することで起こる多彩な症状に、多くの方が翻弄されることになります。 そして、この「視床」という場所の特性が、病
1月7日


小脳梗塞の予後はどう変わる?歩行障害・めまい・後遺症の残りやすさと回復期間を専門的にわかりやすく解説
小脳梗塞は、歩行のふらつきやめまい、協調運動の障害など、日常生活に大きな影響を与える後遺症が残ることがあります。 しかし、小脳は回復力が高い部位でもあり、適切な治療とリハビリを継続すれば、症状が大きく改善するケースも多く見られます。 予後を左右するのは発症後の対応スピードと、生活の中でどれだけ回復を支える習慣を整えられるかです。 この記事では、小脳梗塞の予後を決める要因、リハビリの重要性、日常生活での工夫、そして再発予防までを総合的に解説していきます。 小脳梗塞とは何か 小脳梗塞とは、小脳へ血液を送る血管が詰まることで、小脳の一部が障害を受ける状態を指します。 小脳は運動能力そのものを生み出す場所ではありませんが、 「身体の動きを滑らかに調整する」 「バランスを保つ」 「姿勢を安定させる」 といった役割を担っているため、障害されると日常生活のあらゆる動作に影響が出ます。 脳梗塞というと半身麻痺や言語障害がよく知られていますが、小脳梗塞の場合は歩行の不安定さや激しいめまいが目立つことが特徴です。 発症してすぐに倒れ込む、立ち上がれない、周囲がぐるぐ
2025年12月14日


「冬の朝、足が突っ張って歩けない…」原因は「異常気象」にもありました。命と生活を守る、寝室とトイレの「温度管理」術
今年の冬は、例年以上に「危険」です 12月に入り、朝の冷え込みがいよいよ厳しくなってきました。 布団から出るのが億劫になるこの季節、脳卒中を経験された方、そしてそのご家族から、決まってこのような不安の声が届き始めます。 「最近、朝起きると麻痺した手足がガチガチに固まっているんです」 「夏場はもう少しスムーズに動けたのに、最近は足が棒のように突っ張ってしまって…」 「もしかして、病気が悪化しているんでしょうか? リハビリが足りないんでしょうか?」 もし、あなたも同じような不安を感じているなら、まずは安心してください。 それは、病気の再発でも、あなたの努力不足でもありません。 冬の寒さに対する、体のごく自然な「防御反応」です。 特に、今年は要注意です。 みなさんも感じている通り、今年は「秋」と呼べる期間が極端に短くありませんでしたか? いつまでも暑い日が続いたかと思えば、急に冬の寒さがやってきました。 私たちの体は本来、秋という準備期間を経て、少しずつ寒さに慣れていくものです。 しかし今年は、その「慣れる期間」がないまま、いきなり冬に放り出されてしま
2025年12月14日
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