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【病態別】第10回:後頭葉出血・梗塞 見えない半分と生きる。不安に涙するご本人とご家族へ
はじめに:大げさではありません。本当に見えなくて、心細いのです 病態別にお話しする連載も、今回で第10回を迎えます。 今回は、頭の後ろ側にある脳の領域、後頭葉(こうとうよう)のダメージについて取り上げます。 リハビリ病院で訓練を重ね、無事に退院の日を迎えることができた。 病院では見えない側を意識する練習をしっかり行い、ご本人も自分は右半分が見えにくいという自覚を持っています。 それなのに、いざ実際の家に帰って生活を始めると、病院ではできていたはずの動作でエラーが増えていきます。 狭い廊下で同じ側の壁や家具に肩をぶつける。 食事の時も、お皿の片側にあるおかずを残す。歩くことを極端に不安がり、すり足で少しずつしか進まない。 そんな怯え、時に心細さから涙ぐむ姿を見て、ご家族は深く傷つき、どう接していいか分からなくなることが多くあります。 病院ではあんなに上手に歩いていたのに。そんな行き場のない悲しみを抱えるご家族に、まず最初にお伝えしたいことがあります。 ご本人は決して、大げさに怖がっているわけでも、注意力が足りないわけでもありません。...
3月12日


【病態別】第9回:側頭葉・前頭葉出血・梗塞(左側) 言葉が通じない?見えない壁と闘うご家族へ
はじめに: 言葉を忘れたのではなく、翻訳機が休業しているのです 病態別にお話しする連載の第9回目は、言葉の壁となる失語症を引き起こす、左側の側頭葉(そくとうよう)や前頭葉のダメージについて取り上げます。 手足のリハビリを頑張り、無事に退院を迎え、一緒に家に帰ることができた。 それなのに、いざ生活の中で会話をしようとすると、決定的な違和感に直面します。 言いたいことが言葉にならない。相手の話しかけている意味が分からない。 言葉のキャッチボールが成立しないという見えない壁の前に、ご家族は深い悲しみと孤独を抱えることになります。 どうして話が通じないの。あんなに楽しくおしゃべりしていたのに。そんな絶望の淵にいるご家族に、まず最初にお伝えしたいことがあります。 ご本人は、あなたへの愛情や、これまでの思い出を忘れたわけではありません。 頭の中にある想いを言葉に変換する、あるいは相手の言葉を意味として受け取る翻訳機が、病気の影響で休業している状態なのです。 失語症の3つのタイプ:表出と理解の壁 失語症には、大きく分けて3つの種類があります。...
3月9日


【病態別】第8回:前頭葉の出血・梗塞 性格が変わった?見えない障害と闘うご家族へ
はじめに: 怠けているのではありません。脳がそうさせているのです 病態別にお話しする連載の第8回目は、おでこの奥にある大きな脳の領域、前頭葉(ぜんとうよう)のダメージについて取り上げます。 手足の麻痺は少しずつ良くなり、無事に退院の日を迎えることができた。 それなのに、家に帰ってからの様子がなんだかおかしい。 一日中ぼーっとテレビを見ているだけで、自分からは何もしようとしない。 ちょっとしたことで急に激高し、大声を荒げる。 これまで当たり前にできていた料理の段取りが全く組めず、パニックに陥る。 まるで別人のように性格が変わった姿を見て、ご家族は深く傷つき、どう接していいか分からなくなることが多くあります。 なんで怠けているの。 昔はあんなに優しくて、気配りのできる人だったのに。 そんな行き場のない悲しみを抱えるご家族に、お伝えしたいことがあります。 ご本人は決して、わざとやっているわけではありません。 性格が悪くなったわけでも、怠けているわけでもないのです。 前頭葉という場所が傷ついたことで、心と行動をコントロールする機能が、お休みしている状態な
3月6日


【病態別】第7回:頭頂葉出血・梗塞(右側) 見た目は元気なのに左側だけぶつかる。空間が消える落とし穴
はじめに:不注意ではありません。本当に見えていないのです 病態別にお話しする連載の第7回目は、 頭頂葉(とうちょうよう)のダメージで起こりやすい、 半側空間無視(はんそくくうかんむし)について取り上げます。 この障害には、非常に恐ろしい落とし穴があります。 それは、手足の麻痺がほとんどなく、 言葉も普通に話せるケースが多いことです。 はたから見れば、すっかり元通りになったように見えます。 しかし、なぜか歩くと左側の壁や家具に何度もぶつかる。 食事の時、お皿の左半分だけおかずを綺麗に残してしまう。 左側から家族が優しく声をかけても、全く気づいてくれない。 こうした姿を毎日見ていると、ご家族はつい、 もっと注意して周りを見てよ、と怒ってしまいがちです。 何度も同じ失敗を繰り返す姿に、 わざとやっているのではないかと悲しくなることもあるでしょう。 しかし、ご本人は決して怠けているわけではありません。 ご本人の世界からは、 本当に左側の空間がすっぽりと消滅してしまっているのです。 頭頂葉の役割と、空間が消えるメカニズム 左半側空間無視は、主に右側の頭頂葉
2月27日


【病態別】第6回:小脳出血(しょうのうしゅっけつ) 力はあるのに、なぜ世界は回るのか?精密機械の故障と、数年がかりのチューニング
はじめに: 筋肉はある、でも立てないという恐怖 病態別にお話しする連載の第6回目は、小脳出血を取り上げます。 これまでお話ししてきた脳出血(被殻や脳幹など)では、手足が動かなくなる麻痺が最大の悩みでした。 しかし、小脳出血の患者さんが直面する現実は、それとは全く質の異なる恐怖です。 ベッドの上で手足を動かしてみると、力はある。蹴る力も、握る力も残っている。 これなら歩けるかもしれない。 そう思って立ち上がった瞬間、世界がぐにゃりと歪み、自分の身体がまるで荒波に浮かぶ小舟のように制御不能になる。 これが、小脳出血特有の運動失調(うんどうしっちょう)です。 筋力低下ではなく、コントロール不全。 力があるだけに、余計に自分の身体が自分のものでなくなったような、深い絶望感を感じやすい病態でもあります。 今回は、この見えない精密機械の故障と、そこから再び地面を踏みしめるまでの道のりについて、深くお話ししていきます。 小脳の役割:舞台裏の演出家 小脳は、脳の後ろ側、脳幹の背中に張り付くように位置しています。 ここは、筋肉に動け!と命令する場所(司令塔)ではあ
2月27日


【病態別】第5回:放射冠・内包(ほうしゃかん・ないほう) 脳のダメージは小さいのになぜ動かない?情報の高速道路の正体
はじめに: 最も納得がいかないと言われる場所 病態別にお話しする連載の第5回目は、放射冠や内包について取り上げます。 病院で、出血した範囲はごくわずかですよ、と説明を受けたのに、実際には手足が全く動かない。 そんな経験をされている方は多いのではないでしょうか。 その原因の多くは、ダメージを受けた場所が情報の通り道である放射冠や内包だからです。 放射冠・内包とは何か:神経の関所 脳の表面(大脳皮質)で作られた、動け!という命令は、一本の束にギュッと集まって首の方へ降りていきます。 ・放射冠:脳の表面から神経が集まってくる扇の要のような場所 ・内包:その神経がさらに一箇所に固まって通るトンネルのような場所 これまでの視床や被殻が、情報の処理や調整を行う司令塔や工場だとしたら、放射冠や内包はそこから伸びる電線や情報の高速道路です。 なぜここは麻痺が重くなりやすいのか 工場が少し壊れても他のラインで代用できますが、電線は一箇所でも断線すれば、その先にある手足は一切点灯しません。 内包、特に後脚と呼ばれる場所は、全身の運動神経が驚くほど狭い範囲に密集して通
2月12日


【病態別】第4回:脳幹出血(橋出血など)|命のスイッチを再起動し、再び自分の身体を取り戻すまで
はじめに: 生命の源、脳幹での出血 連載の第4回目は、脳出血の中でも最も重篤な経過を辿ることが多い脳幹(のうかん)出血を取り上げます。 脳幹は、大脳のさらに奥、首の付け根に近い場所に位置する、親指ほどの太さしかない部位です。 ここには、私たちが人間として生きていくための「根っこ」の機能が凝縮されています。 ここでの出血は、命に関わる大きな事態であると同時に、回復のプロセスも非常に特殊です。 1.片麻痺の常識が通用しない脳幹の特殊性 なぜ脳幹の出血が、これほどまでに重い症状を引き起こすのでしょうか。 通常、脳からの運動指令は延髄(えんずい)の最下部にある錐体交叉(すいたいこうさ)という場所で左右が入れ替わります。 これによって右脳は左半身を、左脳は右半身を動かしています。 しかし、その手前にある橋(きょう)や延髄は、左右両方の手足に繋がる神経の束が、極めて狭い範囲に密集して通っています。 そのため、たとえ小さな出血であっても、この「神経の高速道路」を丸ごと遮断してしまい、左右どちらか一方ではなく、全身が動かなくなる四肢麻痺(ししまひ)に近い状態にな
1月29日


【病態別】第3回:皮質下出血|見えない障害と向き合い、家族で歩む長期戦の心得
はじめに: 皮質下出血とは何か 病態別にお話しする連載の第3回目は、皮質下(ひしつか)出血を取り上げます。 第1回の視床出血、第2回の被殻出血が脳の深い場所での出来事だったのに対し、皮質下出血は脳の表面に近い場所で起こる出血です。 この病態の最大の特徴は、出血する場所(前頭葉、頭頂葉など)によって現れる症状が全く異なる点です。 手足は比較的よく動く一方で、性格が変わったように見えたり、判断力が落ちたり、空間を正しく認識できず物にぶつかったりといった高次脳機能障害が前面に出やすいのが特徴です。 周囲からは一見分かりにくい生活のしにくさに、ご本人もご家族も翻弄されやすい場所でもあります。 1.動けるから大丈夫という言葉の落とし穴 皮質下出血の方は、病院の評価では自立や軽症と判断され、早期に退院となることも少なくありません。 しかし、本当の戦いは自宅に戻ってから始まります。 手足は動くのに、なぜか料理の手順を間違える。歩けるのに、左側の壁に何度も肩をぶつけてしまう。 穏やかだった人が、急に怒りっぽくなった。 こうした症状は、目に見える麻痺よりもずっと、
1月29日


【病態別】第2回:被殻出血|最も多い脳出血から、どうやって生活の動きを取り戻すか
はじめに:脳出血の約4割を占める被殻出血を知る 病態別にお話しする連載の第2回目は、脳出血の中で最も発症割合が高いと言われている「被殻(ひかく)出血」です。 統計的には脳出血全体の約40パーセントから50パーセントを占めるとされており、リハビリの現場で私たちが最も多く出会う病態でもあります。 被殻という場所は脳の深いところにあり、主に運動のコントロールを司っています。 ここに出血が起きると、反対側の手足に麻痺が出たり、言葉が出にくくなったり、あるいは高次脳機能障害を併発することがあります。 医療的な事実と回復の一般的な流れ まずは、一般的な医療の視点から見た特徴を整理します。 被殻出血の症状の重さは、出血の量によって決まります。 少量であれば保存療法が選択されますが、出血量が多く脳を強く圧迫している場合は、血腫を取り除く手術が行われることもあります。 手足の動く機能(身体の機能面)の回復については、やはり発症から3ヶ月から6ヶ月までが最も変化が出やすい時期とされています。 しかし、被殻出血においては、この機能的な回復の後に、もう一つの大きな回復の
1月16日


脳梗塞で幻覚・妄想が起こる原因とは?症状の特徴とリハビリ・治療方法を専門家視点でわかりやすく解説
脳梗塞の後遺症と聞くと、手足の麻痺や言語の障害が思い浮かびやすいですが、実は「幻覚」や「妄想」といった精神症状が現れることも珍しくありません。 突然見えないものが見えたり、事実と異なる思い込みが強くなったりすると、本人は大きな不安を抱え、家族もどのように接すればよいか迷ってしまいます。 しかし、これらの症状は脳の損傷によって起こる“高次脳機能の乱れ”であり、適切な理解と対応があれば落ち着いていくことが多い症状です。 この記事では、脳梗塞後の幻覚・妄想の原因、治療・リハビリ、家族の適切な対応方法までをわかりやすく解説します。 脳梗塞と幻覚・妄想の関係を理解する 脳梗塞の発症後、一部の方に幻覚や妄想といった精神症状が現れることがあります。 身体の後遺症が注目されやすい一方で、脳の損傷によって「認知」「思考」「感情の安定」に影響が起こると、現実との境界が揺らぎ、見えていないものが見える、事実と異なる思い込みを強く持つといった状態が生じます。 これは決して珍しいことではなく、特に急性期〜回復期初期にかけて多く見られます。 また、症状は一時的であることも多
1月16日


【病態別】第1回:視床出血|「リハビリの期限」に、あなたの体の可能性を閉じ込めないために
はじめに:なぜ、視床出血の回復には「別のカレンダー」が必要なのか 今日から数回に分けて、脳卒中の種類ごとに、リハビリの現場で私が感じていること、そして知っておいていただきたい大切な事実についてお話ししていきたいと思います。 第1回目は、脳出血の中でも比較的多く、そして非常に複雑な回復のプロセスをたどることが多い「視床(ししょう)出血」についてです。 視床は、脳のほぼ中心に位置する「中継センター」のような場所です。 全身から送られてくる感覚情報や、体を動かそうとする指令、さらには感情や意識に関わる情報までがすべてここを通って、それぞれの専門部署へと送られます。 いわば、身体という巨大な組織をつなぐ「メインサーバー(情報統括センター)」のような役割を担っています。 ここで出血が起きた時、直面するのは「手足の動く機能」の低下だけではありません。 意識の低下、耐えがたい痛み、あるいは自分の体の位置が分からなくなるといった、全身のネットワークが混乱することで起こる多彩な症状に、多くの方が翻弄されることになります。 そして、この「視床」という場所の特性が、病
1月7日


小脳梗塞の予後はどう変わる?歩行障害・めまい・後遺症の残りやすさと回復期間を専門的にわかりやすく解説
小脳梗塞は、歩行のふらつきやめまい、協調運動の障害など、日常生活に大きな影響を与える後遺症が残ることがあります。 しかし、小脳は回復力が高い部位でもあり、適切な治療とリハビリを継続すれば、症状が大きく改善するケースも多く見られます。 予後を左右するのは発症後の対応スピードと、生活の中でどれだけ回復を支える習慣を整えられるかです。 この記事では、小脳梗塞の予後を決める要因、リハビリの重要性、日常生活での工夫、そして再発予防までを総合的に解説していきます。 小脳梗塞とは何か 小脳梗塞とは、小脳へ血液を送る血管が詰まることで、小脳の一部が障害を受ける状態を指します。 小脳は運動能力そのものを生み出す場所ではありませんが、 「身体の動きを滑らかに調整する」 「バランスを保つ」 「姿勢を安定させる」 といった役割を担っているため、障害されると日常生活のあらゆる動作に影響が出ます。 脳梗塞というと半身麻痺や言語障害がよく知られていますが、小脳梗塞の場合は歩行の不安定さや激しいめまいが目立つことが特徴です。 発症してすぐに倒れ込む、立ち上がれない、周囲がぐるぐ
2025年12月14日


「冬の朝、足が突っ張って歩けない…」原因は「異常気象」にもありました。命と生活を守る、寝室とトイレの「温度管理」術
今年の冬は、例年以上に「危険」です 12月に入り、朝の冷え込みがいよいよ厳しくなってきました。 布団から出るのが億劫になるこの季節、脳卒中を経験された方、そしてそのご家族から、決まってこのような不安の声が届き始めます。 「最近、朝起きると麻痺した手足がガチガチに固まっているんです」 「夏場はもう少しスムーズに動けたのに、最近は足が棒のように突っ張ってしまって…」 「もしかして、病気が悪化しているんでしょうか? リハビリが足りないんでしょうか?」 もし、あなたも同じような不安を感じているなら、まずは安心してください。 それは、病気の再発でも、あなたの努力不足でもありません。 冬の寒さに対する、体のごく自然な「防御反応」です。 特に、今年は要注意です。 みなさんも感じている通り、今年は「秋」と呼べる期間が極端に短くありませんでしたか? いつまでも暑い日が続いたかと思えば、急に冬の寒さがやってきました。 私たちの体は本来、秋という準備期間を経て、少しずつ寒さに慣れていくものです。 しかし今年は、その「慣れる期間」がないまま、いきなり冬に放り出されてしま
2025年12月14日


「履ける靴」ではなく、「履きたい靴」を。装具ユーザーを悩ませる「靴難民」からの脱出法
はじめに:装具が完成した日、ふと感じる「戸惑い」 「お待たせしました。あなた専用の装具が出来上がりましたよ」 数週間の調整を経て、ようやく手元に届いたプラスチック製の装具。 「これで、もっと安定して歩けるようになる」 「リハビリが前に進む」 そんな希望に胸を膨らませて足を通した、その直後。 ふと、ある現実に直面し、立ち尽くしてしまう方がいらっしゃいます。 「あれ? 私の靴、入らない…」 今まで履いていたお気に入りのスニーカーも、仕事用の革靴も、ちょっとそこまで行くためのサンダルも。 玄関に並んでいる全ての靴が、装具を着けた足には全く入らなくなってしまうのです。 病院の売店に行くと、勧められるのは機能性を最優先した靴たち。 マジックテープが大きく開き、とても履きやすい、素晴らしい靴です。 でも、それを手にした時、心のどこかで「これを履いて、友人に会いにいけるだろうか」「スーツにこの靴を合わせて、会社に行けるだろうか」と、少しだけ躊躇してしまう自分がいる。 「歩くためには仕方がない」 そう自分に言い聞かせて、おしゃれを諦め、靴箱の奥にお気に入りの靴を
2025年12月7日


「免許は返ってくる」ものではない。「勝ち取る」ものだ。脳卒中後の運転再開、その険しい道のりと、2人の男たちの挑戦
ハンドルを握ることは、生きること 「もう一度、車の運転がしたい」 リハビリでこの言葉を聞くとき、私はいつも、その言葉の裏にある、切実な想いを感じ取ります。 それは単に「スーパーに行きたい」「病院に行きたい」という移動手段の話をしているのではありません。 特に、昭和の時代を駆け抜けてきた60代、70代の男性にとって、運転免許証とは、ただの資格ではありません。 それは社会人として一人前であるという「ステータス」であり、休日には家族をいろんな場所へ連れて行った「思い出の証」であり、そして何より、誰の力も借りずに自分の意志でどこへでも行けるという「自由と尊厳」そのものです。 脳卒中によって、ある日突然、その翼をもがれてしまった喪失感。 ちょっとした用事でも「家族に送迎を頼まなければならない」という情けなさ。 移動できないことで、社会との接点が断たれ、家庭内での父親や夫としての役割すら失ってしまったように感じる虚無感。 その痛みは、健康な人には想像もつかないほど深く、当事者の心を蝕みます。 しかし、現実は厳しいものです。 「退院して体が動くようになれば、す
2025年12月4日


「もうこれ以上は良くなりません」と言われても。医学的な「6ヶ月の壁」の正体と、その先にある「筋肉の可能性」
「6ヶ月」という数字に、縛られていませんか? 「発症から半年が過ぎましたね。これ以上の回復は難しいので、これからは今の機能を維持していきましょう」 医師やセラピストから、そんな言葉を投げかけられ、目の前が真っ暗になった経験はありませんか。 あるいは、ご自身でネットを検索し、「脳卒中の回復は6ヶ月でプラトー(停滞期)を迎える」という情報を見て、絶望しているかもしれません。 「私の人生、もうこれ以上良くならないのか…」 もし、あなたがそう思っているなら、私は専門家として断言します。 その絶望は、半分は医学的に正解ですが、あとの半分は、大きな誤解が含まれています。 医学的なデータとしての「6ヶ月の壁」は存在します。 しかし、それはあくまで「ある側面」の話に過ぎません。 あなたの体には、まだ手つかずのまま眠っている「伸びしろ」が、確実に残されています。 今日は、多くの人が誤解している「6ヶ月の壁」の本当の意味と、それを乗り越えるための「赤身と白身の筋肉の話」、そして、重度の方から軽度の方まで、それぞれのステージでどう希望を見出していくかについて、じっくり
2025年11月20日


「ごめんね」と「ありがとう」の間で、脳卒中後の家族との「新しい関係」の築き方
その「ごめんね」、いつから聞くのが辛くなりましたか? 「ごめんね、また失敗しちゃった」 「ごめんね、いつも迷惑ばかりかけて」 ご本人が、ふと口にする「ごめんね」という言葉。 「そんなことないよ、気にしないで」 「大丈夫だよ」 そう返すあなたの心は、本当に「大丈夫」でしょうか。 最初は優しく受け止められていたその言葉が、いつからか、聞くたびにあなたの心を重くし、イライラさせ、疲弊させてはいないでしょうか。 あるいは、ご本人も。 本当は「ありがとう」と言いたいのに、申し訳なさが先に立ち、「ごめんね」という言葉ばかりが口をついて出てしまう。 そして、その言葉が、ご家族の表情を曇らせていくことに気づき、さらにご自身を責めてしまう。 脳卒中という大きな出来事を境に、それまで当たり前だった夫婦や親子の関係が、「患者」と「介護者」という、重苦しい役割に変わってしまった。 この記事は、そんな「ごめんね」と「ありがとう」の狭間で、出口が見えずに苦しんでいる、ご本人と、そして何より、一人で支えようと頑張りすぎているご家族、あなたのためだけに書きました。...
2025年11月18日


目に見えない後遺症と、どう付き合うか? ~「怒りっぽくなった」「忘れっぽい」は、性格ではなく後遺症です~
その「生きづらさ」、誰にも理解されないと思っていませんか? 脳卒中のリハビリと聞くと、多くの人が「麻痺した手足を、もう一度動かすための訓練」を想像します。 しかし、退院後の生活が始まった時、ご本人と、そばで支えるご家族を、手足の麻痺以上に深く、そして静かに苦しめるものがあります。 それが、「目に見えない後遺症」です。 「最近、なんだか怒りっぽくなった」 「大事な約束を、すっぽかしてしまう」 「あんなに得意だった料理の段取りが、全くできなくなった」 「人の話が、頭に入ってこない」 ご家族は、「リハビリを怠けている」「病気を言い訳にしている」「性格が変わってしまった」と、ご本人を誤解し、どう接していいか分からず戸惑ってしまいます。 そして、なにより辛いのは、ご本人です。 「頑張ろうと思っているのに、なぜか体が動かない」 「自分がおかしくなってしまったんじゃないか」 「家族に迷惑ばかりかけている」 と、誰にも理解されない孤独の中で、ご自身を責め続けています。 もし、あなたの家庭が今、そんな「見えない壁」によって、お互いを理解できなくなり、ギスギスした空
2025年11月9日


「ただいま」の次に目指す、「いってきます」。〜脳卒中後の「復職」という高い壁を越えるために〜
あなたの「いってきます」を諦めないために 「退院おめでとうございます。ご自宅での生活は送れるようになりましたね。」 リハビリ病院でそう言われ、自宅の玄関をまたいだ時、あなたは「ただいま」という言葉と共に、どれほどの安堵を感じたことでしょう。 そして、それを支えてこられたご家族も、どれほど肩の荷が下りたことか、想像に難くありません。 しかし、その安堵も束の間。ご自宅での生活に少しずつ慣れてきた頃、あなたの心には、病院にいた時とは比べ物にならないほど大きく、重たい不安が、再び湧き上がってきてはいないでしょうか。 それは、自分はもう一度「いってきます」とあの玄関のドアを開けられる日が来るのだろうか?という不安です。 「脳卒中は高齢者の病気」というのは、もはや遠い昔のイメージです。 今は、40代、50代という「働き盛り」の最中で、一家の大黒柱として、あるいはキャリアの最前線で活躍していた方々が、突然この病に倒れるケースが、本当に増えています。 彼らにとって、退院は決してゴールではありません。特にあなたの職業人生が、この先まだ20年、30年と残っているのな
2025年10月31日


その装具、最高の「歩行パートナー」になっていますか? 理学療法士が常に足元にいるのと同じ、装具の本当の力
あなたの「相棒」は、その力を発揮していますか? 「退院おめでとうございます。病院で使っていたこの装具で、ご自宅でも歩く練習を続けましょう」 病院でそう言われ、あなたの足に装着された、プラスチックや金属でできた「装具」。 病院でのリハビリの日々、それを着けて一歩一歩、歩く練習を懸命に続けてこられたのだと思います。 しかし、ご自宅での生活が始まった今。 その装具と、どのような関係を築いていらっしゃるでしょうか。 心の奥底では、こんなふうに感じてはいませんか? 「こんなもの、一時的なものだと思っていたのに…」 「いつになったら外せるんだろう。100%の人、みんなが本当は外したいと思っているはずだ」 「実際、こっそり外して生活している。でも、そのせいで最近、前より歩きにくくなってきた気がする…」 そうなんです。 在宅の現場を見ていると、装具を着けなくなった結果、かえって歩けなくなった方、悪い歩き方の癖がついて相談に来た方を私は本当にたくさん見てきました。 そして、もちろん、こんな現実的な悩みもあるでしょう。 「歩くと、決まってくるぶしやスネの同じ場所が赤
2025年10月28日
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