車に乗っているだけで疲れるのはなぜ?
- 1 日前
- 読了時間: 6分

ただ乗っていただけなのに疲れるのは、気合の問題ではない
ご家族の運転でスーパーへのお買い物や、少し遠くへのお出かけ。
窓から流れる景色を眺めながら、助手席や後部座席に座っているだけなのに、目的地に着く頃にはなぜかぐったりと疲労を感じている。そんなご経験はありませんか。
周りからは「座っていただけなのに」「これから出かけるのに、もう疲れたの?」と不思議そうな顔をされることがあります。
ご自身でも、ただ乗っていただけなのにどうしてこんなに体力が落ちたのだろうと、落ち込む日があるかもしれません。
ですが、車に乗っているだけで疲れるのには、体の仕組みとしての明確な理由があります。
車の中は休息ではなく、見えない揺れとの戦いだった
あなたは車の中で、ただ休んでいたわけではありません。
揺れや遠心力という目に見えない波と戦い続ける、とても立派な運動を行っていたのです。
私たちが車に乗っているとき、体には前後左右から目に見えない力が常にかかっています。
発進するときの後ろへ引っ張られる力、ブレーキをかけたときの前にのめる力、そしてカーブを曲がるときの横に振られる力です。
脳卒中を経験する前の体は、こうした揺れに対して無意識のうちに腹筋や背筋を使い、姿勢をまっすぐに保つ調整を行っていました。
しかし、体の半分が思うように動かない状態になると、その無意識のバランス調整が途方もない大仕事に変わります。
姿勢が崩れないように、麻痺のない側の手足で必死に踏ん張り、体幹の筋肉に全神経を集中させて重力や揺れに耐えています。
それはまるで、常にバランスボールの上に乗って揺らされているような状態です。
外から見ればただ静かに座っているように見えても、体の内側では全速力で走っているのと同じくらいの莫大なエネルギーを消費しています。
だからこそ、目的地に着いたときに強い疲労感があるのは、ごく自然な体の反応なのです。
気合が足りないわけでも、体力が落ちたわけでもありません。
車の中という揺れる空間で、ご自身の体が一生懸命に安全を守り抜いた尊い証です。
ご家族に知ってほしい「その見えない努力を労わる言葉」

もし、運転席でこの記事を一緒に読んでくださっているご家族がおられましたら、どうか知っていただきたいことがあります。
運転席でハンドルを握っていると、体は無意識にこれから起こる揺れを予測できるため、実は加速やブレーキの力を同乗者とは全く違う感覚で受け止めています。
そのため、運転しているご本人は自分ではとてもスムーズに、上手に運転できていると勘違いしやすいものです。
しかし、揺れの予測ができない助手席や後部座席に座っている方にとっては、そのほんの少しのブレーキやカーブが、遊園地のアトラクションのように大きな揺れとして体にのしかかっています。
助手席や後部座席で静かに座っているその時間は、決して楽な休息の時間ではありません。見えない揺れと戦い続ける、緊張の連続です。
だからこそ、目的地に到着したときは「車の中、揺れて疲れたよね、よく頑張ったね」と、その見えない努力を労わってあげてください。
そして、運転をするときはダッシュボードに水をたっぷりと注いだコップを置いている状態をぜひイメージしてみてください。
その水がひとしずくもこぼれないように、じわっと優しくアクセルを踏み、カーブでは十分に速度を落とし、止まるときは羽が降りるように静かにブレーキをかける。
そんなほんの少しの運転の想像力が、乗っている方にとっては何よりの安心と、体の余白につながります。
また、疲れを和らげるためには車の中で「座る場所」も実はとても大切なポイントになります。
揺れを予測できる環境が、体幹への負担を驚くほど軽くする
麻痺のある体は、どうしても揺れに対する反応が遅くなります。だからこそ、あらかじめ揺れを予測できる環境を作ることがとても大きな助けになります。
もし乗り降りに無理がなければ、見晴らしが良い助手席に座ることをおすすめしています。
前方の景色がよく見えて、信号が赤に変わったことや、カーブが近づいていることが目で見て分かりやすいからです。
前の状況を事前に知ることができれば「あ、これからブレーキがかかるな」と、心と体で前もって準備をすることができます。
この少しの予測があるだけで、体幹にかかる負担は驚くほど軽くなります。
では、車での移動を少しでも楽にし、お出かけを楽しむために日々のリハビリでどのようなことができるでしょうか。
それは、座った状態での体幹のトレーニングです。車の中での揺れに耐えるには、背筋を伸ばす力だけでなく、あらゆる方向からの力に抵抗する筋肉が必要です。
まずは安全な椅子に浅く腰掛け、両足をしっかりと床につけます。その状態で、体をゆっくりと前へ倒し、元の位置へ戻す。
次に右へ傾け、左へ傾ける。前後左右の動きに慣れてきたら、今度は少し複雑な動きに挑戦します。
右の斜め前へ倒し左の後ろへ戻す。
左の斜め前へ倒し右の後ろへ戻すというように、対角線の動きを取り入れていきます。
そして最後に、体を左右にゆっくりとひねる動きを加えます。
このように、前後、左右、斜め、そしてひねりというあらゆる方向に対して、体幹の筋肉を少しずつ目覚めさせていくことがとても大事になってきます。
ここで大切なのが、練習のステップです。
体幹トレーニングで、車の揺れに負けない体をつくる

まずはご家族などに介助してもらいながら動けるようにして、次に自力で動けるように練習します。
それができたら、今度は少し抵抗をかけてもらいながら動き、最後は素早く動けるようにする。
このように段階を追って練習していくと、実際の車の揺れのような急な動きに対しても、体幹がしっかりと対応しやすくなってきます。
ご自宅のリビングでも安全に取り組むことができますので、毎日の生活の中に少しずつ取り入れてみてください。
外出するということは、それだけで途方もないエネルギーを使います。
車に乗って移動すること自体がすでに素晴らしい前進です。目的地に着いてすぐに行動できなくても大丈夫です。少し休んでから、ゆっくりと動き出せばよいのです。
焦らず、急がず、昨日よりもほんの少しリラックスして車に乗れた。
そんな微かな変化を大切に拾い上げていきましょう。
その積み重ねがやがて確かな自信となり、少しずつお出かけの範囲を広げていく力となります。
📌無料 脳卒中リハビリ相談 「NIDE脳卒中リハコンサルティング」 のご案内
📌「NIDE脳卒中歩行アカデミー」 のご案内






コメント