夏の家ごもりと片麻痺 〜動かない日が、体を弱らせる前に〜
- 7月21日
- 読了時間: 4分
更新日:7 日前
猛暑が続くと、外に出るのがこわくなります。強い日ざしとうだるような暑さの中では、健康な方でも歩くのがつらい季節です。脳卒中を経験されたお体なら、なおさら「今日は家にいよう」と思う日が増えます。
その判断は、間違いではありません。無理に炎天下を歩けば、脱水や熱中症の危険があります。ただ、家にこもる日が続くと、別の心配が静かに近づいてきます。動かない時間が長くなると、体はどんどん動きにくくなっていくのです。今日はその話をさせてください。
動かないと、体は驚くほど早く衰える
使わない筋肉は、思っている以上に早く細くなります。一週間ほとんど寝て過ごしただけで、脚の力がはっきり落ちることが知られています。これを廃用症候群と呼びます。若い方でもそうなのですから、脳卒中のあとで麻痺のあるお体では、その進み方はもっと速くなります。
やっかいなのは、弱るのは筋肉だけではないことです。関節は固くなり、心臓や肺の働きも落ちます。立ち上がるのがつらくなり、少し歩いただけで息が上がる。すると、ますます動くのがおっくうになる。この悪循環が、夏の家ごもりで生まれやすいのです。
一日の中に、立つ・歩くを少しずつ分ける
まとめて運動しようと思わなくて大丈夫です。大切なのは、一日の中に体を起こす場面を細かく分けることです。
テレビが一区切りしたら立ち上がる。食事は寝床でなく食卓まで移動してとる。こうした小さな動きの積み重ねが、寝たきりへの流れを止めてくれます。
夏ならではの工夫もあります。水分をこまめにとると、その分だけトイレに立つ回数が自然と増えます。暑い時期の水分補給は熱中症を防ぐために欠かせませんが、じつは立ち上がって歩く機会を増やすまたとないきっかけにもなります。トイレへ行き来する回数が増えるのは、決して困ったことではありません。体の状態を保ちながら、自分の足で動く場面がそれだけ増えるということです。
さらにひと工夫。トイレの帰り道に、短い自主トレを入れてみましょう。手すりや壁に軽く手を添えての片足立ち。台所までの数歩を横歩き、そして後ろ歩き。ほんの短い時間と距離で構いません。一回の長さより、こうした小さな運動の回数を増やすことのほうが大切です。ふらつくときは無理をせず、必ず支えのある場所で行いましょう。

涼しい室内でできる運動もあります。椅子に座ったまま、かかとの上げ下げ、ももを持ち上げる、腕を前に伸ばす。数を決めず、疲れない範囲で構いません。エアコンの効いた部屋で、朝の涼しい時間に少しだけ。それだけで体は応えてくれます。
朝と夕の涼しい時間を味方につける
外を歩くなら、日ざしが和らぐ朝の早い時間か、日が傾いた夕方が安心です。日中の暑い盛りは避けて、日陰の多い道を選ぶ。水分を持って、短い距離から。無理をしない外出は、気分の切り替えにもなります。
家の中に閉じこもる日が続くと、気持ちまで沈みがちです。外の風に当たり、季節を感じるだけで、心がふっと軽くなることがあります。
じつは、外の空気に少し触れることには、もう一つ大切な意味があります。人の体には、暑さ寒さに合わせて自分を整える力がそなわっています。四季のうつろいをほんの少しでも肌で感じることが、その力を保つ助けになります。近ごろは温暖化と言われ、日本の夏はきびしさを増していますが、人はもともと、まわりの環境に少しずつ慣れていける生き物です。窓を開けて風を入れる、玄関先で朝の空気を吸う。それだけでも構いません。季節に体を慣らしていくことが、健康で活動的な暮らしを続ける土台になります。
ご家族へ:動く「きっかけ」をそっと作る
動きなさいと言葉で促すより、自然に体が動く用事を作るほうがうまくいきます。一緒に窓辺まで洗濯物を運ぶ、台所で野菜を洗ってもらう、玄関先まで郵便を取りに行く。役割があると、人は自然と立ち上がります。
できないことを数えるより、できたことに気づいて声をかけてください。今日は自分で立てた、昨日より長く歩けた。その一言が、次の一歩を生みます。

専門職として
私たちは、その方のお体の状態と、ご自宅の環境に合わせて、夏でも安全に続けられる運動をお伝えしています。どの筋肉に働きかけ、どのくらい、どんな姿勢で動かせばよいか。暑い時期だからこそ、無理なく、けれど止めない工夫を一緒に考えます。
動かない夏をやり過ごすのではなく、涼しく整えた家の中で、少しずつでも体を動かし続ける。その積み重ねが、秋になったときの一歩の軽さにつながります。不安なときは、いつでも私たちを頼ってください。科学的な視点と、あなたに寄り添う心で、すぐそばで応援し続けます。
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