夏の装具と片麻痺 〜赤くなる足の原因は、たいていバンドにあります〜
- 7月28日
- 読了時間: 7分
更新日:8月2日

夕方、装具を外すと、靴下が汗で湿っている。ふくらはぎやくるぶしのあたりが、うっすら赤くなっている。夏になると、こうしたご相談が増えます。
赤くなっていると、多くの方がまず「装具が合わなくなったのだろうか」と考えます。けれど装具は、作るときに足の型をきちんと取って作られています。形そのものが急に合わなくなることは、そう多くありません。夏に赤くなる理由の多くは、装具ではなく使い方のほうにあります。今日はその話をさせてください。
いちばん多い原因は、バンドの緩みです

装具のバンドが緩いと、歩くたびに、装具の中で足がわずかに動きます。この小さなずれの繰り返しが摩擦になり、皮膚が赤くなり、やがて皮がむけていきます。強く当たって痛むのではなく、こすれて傷んでいくのです。
麻痺のある足は感覚が鈍くなっていることが多く、締めた感じがつかみにくいため、知らないうちに緩く留めてしまいがちです。夏は汗で肌が滑りやすくなる分、そのずれはいっそう起きやすくなります。
締める順番は、足首、すね、足の甲です。まずかかとを装具の奥までしっかり収めてから、足首のバンドを確実に締めます。ここさえ決まれば、あとのバンドは軽く留めるだけで足は動きません。逆に、足首が緩いまま甲だけを強く締めても、足は中で動き続けます。
朝、出かける前にバンドを確かめる。昼にもう一度、締め具合を見直す。この二回だけで、夕方の赤みはずいぶん減ります。ご自身で毎日できる、いちばん確実なセルフケアです。
こんな歩き方になったら、バンドを疑ってください

バンドが緩んでいることに、ご自身で気づける手がかりがあります。皮膚を見るより先に、歩き方に出るのです。
足のつっぱりが強いわけでもないのに、装具をつけた足がうまく前に出ない。歩き出しの一歩目で、つま先がなかなか出てこない。歩いている途中で、つま先が床に引っかかる。歩きながら、膝がガクッとロックするような感覚がある。いつもの歩幅が出ず、麻痺していないほうの足の一歩が、いつもより小さくなっている。
こうしたことが起きているとき、足首のバンドが緩んでいることがよくあります。かかとが装具の奥から浮いて、足が中で前へずれてしまうと、つま先が上がりきらず、膝への力の伝わり方も変わってしまうからです。
体調が落ちたのだろうか、麻痺が進んだのだろうか。そう心配になる前に、まず足首のバンドを確かめてみてください。締め直しただけで、いつもの歩きが戻ってくることは、けっして珍しくありません。
バンドを気にすることには、いいことがいくつも重なります。足のずれが減れば、こすれによる皮膚のトラブル、いわゆる床ずれを防げます。歩きがいつもどおりに保たれれば、つまずきや転倒も減ります。朝つけたとき、出かける前、帰ってきたとき。暮らしの節目にちょっと確かめる。それを習慣にしていきましょう。
夏は、そこに汗が重なります
汗で湿った皮膚は、ふやけてやわらかくなります。ふやけた皮膚は、いつもと同じこすれ方でも傷つきやすい。冬はなんともないのに夏だけ赤くなる、という方がいるのはこのためです。
ですから、夏にやることは二つです。ひとつは、ずれを減らすこと。つまりバンドです。もうひとつが、汗を減らすことです。
私がおすすめしているのは、ハイソックスです
訪問の現場でお伝えして、いちばん喜ばれている工夫があります。装具の下に履く靴下を、くるぶし丈のものからハイソックスに変えることです。
理由は二つあります。ひとつは、装具のいちばん上のふち、ふくらはぎに当たる部分まで布で覆えること。短い靴下では、そのふちが素肌に直接当たり、汗と一緒にこすれてしまいます。もうひとつは、汗を吸ってくれることです。肌と装具のあいだに一枚あるだけで、湿気の逃げ場ができます。
選ぶときは、綿の混ざったものを。汗をよく吸ってくれます。そして、汗をかいたら替える。夏は一日に二枚、外出の日はかばんに替えを一足。それだけで足のトラブルはずいぶん減ります。履いたあとに、しわが寄っていないかも見てください。しわは、そのまま皮膚がこすれる場所になります。
蒸れやすさは、装具のタイプで違います
ここは、ご自分の装具がどちらかで話が変わります。
プラスチックでできた装具は、汗を外へ通しません。夏のあいだは、中に熱と湿気がこもりやすくなります。この場合は、プラスチックに小さな穴をあけて空気の通り道を作る、という方法があります。中の空気が動くようになり、同じ気温でも環境が変わります。
ただし、これはご自身でやってはいけません。装具は場所によって力のかかり方がまったく違い、穴をあけてよい場所と、あけると強度が落ちる場所があります。その見極めができるのは、装具を作った義肢装具士です。「夏はムレて困っている」と伝えれば、あなたの装具に合った通気の工夫を考えてくれます。
一方、金属の支柱と革のベルトでできた装具は、開いている部分が多く、プラスチックほど蒸れることはありません。この場合は、蒸れよりもベルトの締め方と、革の当たり方を見ていきます。
赤くなったとき、どうするか
赤みや傷が出たとき、装具をどうするかは、その状態によって変わります。まずは担当の理学療法士や主治医、装具を作った義肢装具士に見てもらい、治療を優先したほうがよいのか、それとも使いながら様子をみられるのかを、一緒に決めてください。
そのうえで、治療の方針とあわせて、日常生活に支障のない範囲で装具を使う、というのも選択肢のひとつです。装具をすっかり外してしまうと、その日から歩く手段が減ります。トイレやお風呂への移動に人手が要るようになり、暮らしそのものが小さくなってしまう。それも、けっして小さな問題ではないからです。
実際の現場では、傷そのものに絆創膏を当て、その周りにやわらかいものを置いて、傷に圧が集中しないようにしたうえで、歩く生活を続けている方もいらっしゃいます。
ただし、これは正直なところ、手間のかかるやり方です。毎朝の準備が増え、貼り直しも要ります。除圧の仕方を誤ると、押される場所が別へ移ってしまうこともありますので、やり方は必ず専門職と一緒に決めてください。そして何より、そこまでしなくて済むように、傷を作らないことがいちばんです。
当面の手当てとして、靴下を厚めのものに替えるのも有効です。厚みのある靴下は、装具と皮膚のあいだでクッションになり、こすれを足全体へ散らしてくれます。替えたあとは、装具がきつくなりすぎていないか、バンドの締め具合を確かめてください。
糖尿病のある方は、とくに早めに
脳卒中を経験された方は、糖尿病を併せ持っていることが少なくありません。糖尿病があると、傷が治りにくくなります。
感覚が鈍くて痛みに気づけないことと、治りにくいことが重なると、気づいたときには皮膚がむけていた、潰瘍になっていた、ということが起こります。小さな赤みのうちに気づけるかどうかが、その後の何か月かを分けます。
だからこそ、毎日見ること。それがいちばんの予防です。
ご家族へ:一日に一度、足を見てあげてください
ご本人は、麻痺のある足を持ち上げて裏側まで確かめるのが難しいことがあります。感覚も鈍く、痛みで気づくこともできません。
お風呂の前後が、いちばん見やすい時間です。赤くなっていないか、皮がむけていないか。あわせて、その日のバンドの締め具合も見てあげてください。緩く留まっていたら、それが赤みの原因かもしれません。気になるところがあれば、担当の理学療法士や主治医、装具を作った義肢装具士にお伝えください。
専門職として
私たちが訪問でうかがったとき、歩き方を見るより先に見るのは、足そのものと、バンドの締まり具合です。かかとが奥まで入っているか、足首のバンドが決まっているか、靴下は何を履いているか。夏はとくに、その一手間が大きな違いを生みます。必要があれば義肢装具士におつなぎして、通気やベルトの調整を一緒に相談します。
暑い季節を、装具と上手につきあって乗り切りましょう。まずは今日、バンドの締め具合を確かめてみてください。足が元気であれば、歩き続けられます。不安なときは、いつでも私たちを頼ってください。科学的な視点と、あなたに寄り添う心で、すぐそばで応援し続けます。
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