伸びるはずの時期に、
変わらないとしたら。
「回復期を終えて、家に帰ってきました。保険のリハビリも受けています。それでも、家での様子は変わりません」
「本人は大丈夫だと言います。玄関の段差で足が止まるのを毎日そばで見ているのは、こちらです」
「担当の方はよく替わります。この先どうしていけばいいのか。腰を据えて相談できる人がいません」
ご本人ではなく、毎日そばで見ているあなたのために書きました。
まず、お困りごとを聞かせてください。ここから先は、私がご一緒いたします。
ご家族が見ている景色
退院の日は、ゴールのはずでした。
「よく歩けるようになりましたね」と言われて、家に帰ってきた。まわりも「よかったね」と言ってくれる。歩けているのだから、そう見えるのだと思います。
でも、毎日そばで見ているご家族だけは、気づいています。玄関の段差の前で、足が止まる。買い物についていくと、途中から歩き方が変わる。ふらついた瞬間に、こちらが息をのむ。
ご本人は「大丈夫だ」と言います。けれど、見ているほうは、大丈夫だと思えない。
病院にはもう通っていない。デイケアには行っている。それでも、退院したころから、あまり変わっていない気がする。このままでいいのか、何かしたほうがいいのか。いったい誰に聞けばいいのかが分からない。
そして、口に出しにくいことが、もう一つあると思います。
「毎日そばにいるのに、私は何をしてあげられているのだろう」。「もっとやらせたほうがいいのか、休ませたほうがいいのか」。夜、ふとした瞬間に、その思いが胸をしめつけてくる。
まず、これだけお伝えします。
あなたのせいでは、ありません。
脳卒中は、ある日、誰の身にも起こりうる病気です。そして、そこから先どれだけ変わっていくかも、ご家族の関わり方だけで決まるものではありません。
罪悪感は、あなたが親御さんを大切に思っている、その深さの裏返しです。毎日そばにいる人ほど、自分を責めます。
まだ良くなるのか、ならないのか

ご家族が本当に知りたいのは、たぶん、これ1つだと思います。
「うちの親は、ここから先、まだ良くなる余地が残っているのか。それとも、もう残っていないのか」
残っていないのなら、覚悟を決めて、これからの暮らしを組み立て直したい。残っているのなら、いま動きたい。その区別がつかないまま、月日だけが過ぎていく。ここがいちばんつらいところだと思います。
「半年で終わり」は、体が決めた線ではありません
入院中か、退院のころに、こう言われた方は多いと思います。「半年を過ぎると、もう良くならないと思ってください」。
その半年という線は、親御さんの体が決めた線ではありません。制度の側にある、事務的な区切りです。病院でのリハビリには、決められた期間があります。そのあとをどうするかは、決まっていません。
手足のまひの戻りは、たしかに半年ごろから、ゆるやかになります。これは本当のことです。でも、「ゆるやかになる」ことと「止まる」ことは、まったく違います。坂道が平らに近づいても、道はその先もずっと続いています。半年の壁は、坂がゆるやかになる地点に立てられた看板です。道の終わりを示すものではありません。
脳には、傷ついていない別の場所が、傷ついた場所の仕事を肩代わりしていく力があります。そして、その新しい道は、使うことでしか太くなりません。人が通らない裏道は、草が生えて、また通れなくなります。毎日たくさんの人が通れば、その道は踏み固められ、広くなっていきます。脳の道も、同じです。
歩けそうなのに、うまく歩けない
私が現場でいちばん多くお会いしてきたのは、こういう方です。
リハビリを一通り受けて、退院して、それでも歩きが思うようにならない。まわりからは「よくなりましたね」と言われる。でも、ご本人だけは分かっている。ここではない、と。
その感じは、思い過ごしではないと思います。
そして多くの場合、お体が限界に来ているのではありません。うまくいかない理由が、動きのどこかにあります。
理由がどこにあるのかは、人によって違います。足首のこともあれば、体の向きのことも、目線のことも、一歩を出す前の、ほんのわずかな怖さのこともあります。
そこを一つ見つけて外すと、次にやれることが一つ増えます。増えたところから、また次が見えてきます。
私はこれを チャンスを広げる と呼んでいます。
ただ、外から見ただけでは分かりません
まだ伸びる余地があるのか、ないのか。動いているところを見て、うまくいかない理由がどこにあるのかを確かめて、初めて言えることです。書類や、これまでの経過だけでは分かりません。
ですから、私がお約束できるのは、良くなります、ということではありません。まだ伸びる余地があるのかどうか、一緒に確かめること。ここまでです。
急ぐ話でもありません。けれど続けていただけたら、できることの範囲は少しずつ広がっていきます。
ご家族にできることは、1つだけです

ご家族からよくいただくご相談に、「本人にやる気を出させるには、どう言えばいいですか」があります。
お気持ちは、よく分かります。ただ、私は、説得はしなくていいと思っています。
説得された人は、たいてい、途中で止まります。そして、うまく進まなかったとき、その気持ちは「私が言わせた」「私が決めさせた」に変わります。ご家族にとっても、ご本人にとっても、いい形ではありません。
ご家族にお願いしたいのは、1つだけです。
一歩先が残っているのかどうか。それを一度だけ確かめる機会を作ること。
それだけです。そのあと続けるかどうかは、ご本人が決めることだと考えています。ご家族が決めることではありません。
そのうえで、日々のなかでできること
機会を作るほかに、ご家族にしかできないことが、いくつかあります。専門家にはできないことです。
比べる相手を変える。倒れる前の親御さんと今を比べると、どれだけ前に進んでも「まだ足りない」にしかなりません。比べる相手は、昨日の親御さんです。そこに変えてみてください。先週は支えがないと立てなかったのが、今週は手すりにつかまって立てた。その小さな前進こそが、本物の変化です。そして、それにいちばん早く気づけるのは、そばにいるご家族です。
声のかけ方を少し変える。「リハビリ、ちゃんと頑張ってる?」は、励ましのつもりでも、頑張っている本人には「試されている」と重く届くことがあります。かわりに、「今日は、どんな一日だった?」「昨日より、なにかできるようになった?」。小さな「できた」が出てきたら、大げさなくらい一緒に喜ぶ。人は、認めてくれる人がいると、もうひと頑張りできるものです。
「危ないからやめて」は「どうしたら、安全にできるかな」に変える。心配のあまり出る言葉ですが、言われ続けると、ご本人は「自分はもう何もできない人間なんだ」と感じます。
私たち専門家が関われるのは、一日のうち、ほんのわずかな時間です。残りの大半の時間を親御さんと過ごすのは、ご家族です。ここは、知識や資格ではなく、その人を思う気持ちからしか生まれません。
保険のリハビリでは、担当がよく変わります
保険のリハビリでは、担当する理学療法士は、途中で替わることがあります。病院や事業所の割り振りで決まります。
「前の方のほうが良かった」。そう感じたことがあるなら、気にしすぎではありません。選べない仕組みの中にいるから起きることです。
自費なら、選べます。誰に見てもらうか、ご自身で決められます。
選べば良くなる、という話ではありません。ただ「この人に」と思って始められるかどうかは、続けるうえで効いてきます。
費用の話
先に、正直に書きます。安くはありません。
保険の使えるサービスではないので、全額がご負担になります。
| NIDE脳卒中リハ 訪問セッション月4回・1回40分 | 月 220,000円 |
|---|---|
| NIDE脳卒中リハ オンラインセッションプレミアム/面談 月2回・訪問 年2回 | 月 88,000円 |
| NIDE脳卒中リハ オンラインセッションスタンダード/面談 月1回・訪問 年1回 | 月 55,000円 |
| NIDE脳卒中リハ オンラインセッションライト/LINEでの動画添削 | 月 33,000円 |
いま受けておられる保険のリハビリは継続し、保険外リハビリの併用から始める方が多くいらっしゃいます。
金額をご覧になって、いまは無理だと思われたなら、それで構いません。このページは、お申し込みをいただくために作っていません。このあとに、ご家族の手で始められることを3つ書きました。そちらだけ持ち帰っていただければ、それで十分です。
伺えるのは、5つの区だけです
対面で伺えるのは、渋谷区・港区・目黒区・新宿区・世田谷区まで。ずいぶん狭いと思われるかもしれません。
私が直接伺っているからです。人を増やせば、伺える範囲は広がります。そのかわり、どなたが伺うか分からなくなります。
それでは、選んでいただく意味がなくなります。ですから、広げずにいます。
遠くの方には、オンラインがあります。動いている様子を動画で見せていただければ、理由がどこにあるのかを確かめるところは、対面と変わりません。
申し込みボタンは、置いていません
このページには、申し込みのボタンがありません。置いていないのには、理由があります。
ご家族が決めて、ご家族が払って始まると、うまく進まなかったときに「私が決めたせいだ」がご家族に残ります。それが、いちばん避けたいことです。
いま、ご家族の手で始められること

ここからが本題です。いますぐ、ご家族の手で始められることが3つあります。
1. LINEで相談する(無料)
いちばん近い入口です。友だち登録をしていただければ、そのまま送っていただけます。
「玄関の段差でいつも止まるのですが、何を見ればいいですか」
「デイケアには行っているのですが、これでいいのでしょうか」
「本人に何と言えばいいのか分かりません」
歩きのことでも、ご家族のことでも構いません。「こんなこと聞いていいのかな」という小さな迷いこそ、遠慮なく送ってください。理学療法士の私が、順番にお返事します。
2. 書籍『親が脳卒中になったとき 家族が最初に読む本』
このページに書いたことは、この本から抜き出したものです。
本のほうには、ここに書ききれなかったことが入っています。医師への質問のしかた、介護保険の手続きの順番、きょうだいとの役割分担、目に見えない後遺症のこと、そして、支えるご家族自身が倒れないための知恵です。
最初から順番に読み通す必要はありません。いま気になるところだけ開けば、それでいいように作りました。Amazonで、紙の本とKindle版があります。
Amazonベストセラー1位(カテゴリ:リハビリテーション医学/2026年7月・Amazon.co.jp 売れ筋ランキング)
本を読むご本人が乗り気でないとき
実際のところ、いちばん多いのは、この状況です。
「そんなものはいらない」
「もう十分やった」
「お金がもったいない」
とくに、しっかりしてこられた方ほど、人の世話になることに強い抵抗を示されます。
まず、その気持ちを頭ごなしに否定しないでほしいのです。拒む背景には、たいてい、「人に迷惑をかけたくない」というお気持ちや、「弱った自分を見せたくない」という思いがあります。それは、その方が大切にしてきた生き方そのものです。
無理に連れてこないでください
これは、こちら側の事情としてお願いしています。
ご本人が納得しないまま来られると、最初の時間が、私を信用していただくところから始まります。そのぶん、動きを見る時間が減ります。うまくいかない理由がどこにあるのかは、ご本人がご自分の意思で動いてくださらないと、確かめられません。ご家族に連れてこられた状態では、いちばん見たいものが出てきません。
ですから、乗り気でないうちは、待っていただいて構いません。
うまくいきやすい伝え方
現場で、うまくいくことのある伝え方を書いておきます。
理由を変えて伝える。「お父さんのため」ではなく、「お母さん(支える側)が倒れると困るから、お願いしたいんだ」。
ハードルを下げる。「続けるかどうかは置いといて、一回だけ見てもらおう」。
信頼している人からすすめてもらう。主治医の先生や、昔からの知り合いの言葉は、家族が言うよりすんなり入ることがあります。
それでも動かないときは、無理に押し通さず、少し時間をおいてください。状態が変わったり、支える側の限界が見えてきたりすると、ご本人のお気持ちも変わることがあります。あせらず、けれど、つながりは切らさずに。
その間も、LINEでのご相談はお使いいただけます。ご本人がその気になったときに何から始めるか、そこでお答えできます。
いまは、他のほうが合っていると私が考えることもあります
お話をうかがったうえで、いまは主治医の先生や、保険のリハビリのほうが合っていると考えることがあります。
そのときは、正直にそうお伝えします。無理にお受けすることはいたしません。
お断りするのは、その方に足りないところがあるからではありません。順番の問題です。私のところは、そちらが一段落してからでも遅くありません。
それまでの間も、LINEでのご相談はお使いいただけます。いま何をしておくといいかは、そこでお答えできます。
担当者から
二出川龍と申します。理学療法士として長く、脳卒中のあとの体と向き合ってきました。のべ3万5000件を超えるリハビリの中で、たくさんのご本人と、その隣にいるご家族に出会ってきました。
その中で、いつも感じることがあります。脳卒中は、倒れたご本人だけの出来事では、決してないということです。
そのまわりには必ず、突然のことに立ちすくみながら、それでも「誰かが何とかしなければ」と動き出した方がいらっしゃいました。倒れた方を照らす光の、すぐ後ろで、誰にも気づかれずに踏ん張っている人たち。
本を書いたのも、このページを作ったのも、その方たちに向けてです。
セッションを担当するのは、私ひとりです。交代しません。
最後に、いちばんお伝えしたいことを書いておきます。
すべてを完璧にやろうとしなくて、大丈夫です。
あなたが心折れずに、今日という一日を終えられたら、それで100点です。
長い道のりになります。でも、一人で歩く道では、ありません。
ご相談の入口
まずは、聞いていただくところからで構いません。

