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エレベーターで自分のペースを守るための優しいルーティーン

  • 3 日前
  • 読了時間: 6分

森の小道を手をつないで歩く高齢の男女。ベージュのベストと淡色の服を着て、緑の木々の中で笑顔で会話している。

扉が開いた瞬間に襲ってくる「待たせては申し訳ない」という焦り

玄関での大変な靴の着脱を乗り越えて、ようやく外の世界へ。


少しずつ歩くことにも慣れ、お買い物や通院など、目的地へ向かう機会も増えてきた頃かもしれません。


ですが、外の環境には、道端の段差や障害物とはまた違う、もう一つの「見えない壁」が存在します。


それは、エレベーターや自動ドア、電車の乗り降りなどに見られる、社会のスピードに合わせなければならないというプレッシャーです。


エレベーターを待っていて、目の前の扉が開く。


さあ乗ろうと足を踏み出そうとした時、背後に他の人が並んでいる気配を感じたり、エレベーターの中で待ってくれている人の視線を感じたりすることがあります。


そんな時、心の中には早く乗らなければ、待たせては申し訳ないと強い焦りが生まれます。


頭の中では早く前へ出ようと警報が鳴り響いているのに、いざ急ごうとすると、足は地面に張り付いたように重くなり、一歩目がなかなか前へ出ない。


焦れば焦るほど体がこわばり、バランスが崩れそうになる。そんなもどかしい経験をされたことはありませんか。


社会のスピードに合わせることが、脳にとって過酷な作業である理由


社会全体を見渡せば、扉が数秒で閉まることや、効率よく人が流れていくことが当たり前になっています。


外の世界は常に一定のスピードで動き続けており、無意識のうちに私たちもそのスピードに乗ることを求められています。


しかし、脳卒中を経験したお体にとって、自分のペースを乱して周囲のスピードに合わせることは、途方もない脳のエネルギーを消費する過酷な作業です。


ただでさえ歩くことに集中力が必要な状態に、後ろの人を待たせない、扉が閉まる前に乗るという別のプレッシャーが重なると、脳は処理しきれずに体に強い緊張のサインを送ります。


その結果、足がすくんで動けなくなるのは、お体の構造上ごく自然な反応なのです。


後ろの人を気遣う優しい心があるからこそ、焦りが生まれます。


その優しさはとても素敵なものですが、まずは何より、ご自身の安全と安心を最優先に守る必要があります。


乗る前の「立ち位置」と「足踏み」で、最初の一歩を整える

明るい病室で、青いパジャマの高齢男性がベッドから立ち上がろうとしている。窓際の白い空間で少し慎重そうな表情。

では、この目まぐるしい社会のスピードの中で、プレッシャーに押しつぶされず、安全に外出を楽しむためにはどうすれば良いのでしょうか。


気合で早く歩こうとするのではなく、ちょっとした考え方の転換と、具体的な身の守り方があります。


ここからは、私が日々のリハビリの現場で患者様と共に見つけてきた、社会のスピードから心と体を守るための具体的な工夫についてお伝えします。


まず、エレベーターを待つ時の「立ち位置と姿勢」に少しこだわってみます。


とても理想的な環境でお話しすると、左側に麻痺がある方は扉に向かって左側で、右側に麻痺がある方は右側で待つのがおすすめです。


そして待っている間、麻痺のある足を半分ほど前に出し、足の幅を肩幅よりも少し広めにとってみてください。


この姿勢をとることでバランスが安定し、歩き出す時のつまずきを防ぐことができます。


もし、今エレベーターが何階にいるのか表示板がある場合は、それをぜひ活用してください。


エレベーターが近づいてきたら、扉が開く前にその場で軽く3、4回ほど足踏みをしてから歩き出します。


事前の足踏みで体をなじませておくことで、乗り降りの第一歩がとてもスムーズになります。


乗っている間も、降りる前も——揺れと方向転換に備えるコツ

扉が開いたら、なるべく入り口の壁に近いところから中へ入ります。


そして、麻痺のある足を軸にして、360度方向転換を行い、壁に寄りかかったり手で触れたりできる安全な場所を確保します。


日本のエレベーターはボタンの位置が様々ですが、そのまま行先のボタンを押せる位置につければ最高です。


エレベーターに乗っている間も、可能であれば麻痺のある足を少し前にして立ってみてください。


そうすることで揺れに対するバランスが格段に取りやすくなり、次に降りる時の足の運びも驚くほどスムーズになります。ぜひ一度、試してみてください。


そして、降りる前の準備も大切です。目的の階が近づいてきたら、心の中で足踏みをするか、実際に左右へ少しだけ早めに重心移動をして体を揺らしておきます。


止まった状態から急に動こうとするから足がすくむのであって、あらかじめ体を動かして準備のスイッチを入れておくことで、扉が開いた瞬間に自然と体が前へ出てくれます。


もちろん、人がたくさん乗っていて正面を向いたまま入らなければならない時もあります。


人が多い時は少し勇気がいりますが、すみませんと声をかけてみてください。


そして、ご自身が壁に寄りかかれる安全なスペースを確保することを優先します。


緊張するのは自然なこと——日頃の練習が当日のお守りになる

明るい寝室で、青いパジャマの男性がベッドに座り、うつむいて落ち込んだ様子を見せている】【。

実際の街中のエレベーターは、ご自宅のマンションで誰もいない時のような状況ばかりではありません。


その都度、乗っている人数も違えば、待っている人の雰囲気も違います。だからこそ、緊張するのはごく自然なことです。


どんな状況でも全く緊張せずに乗るというのは難しく、外に出れば緊張を伴う場面は必ずやってきます。


大切なのは、緊張した状態のままでも、いかに普段と同じように体を動かせるかということです。そのために、日頃のリハビリの内容が大きなお守りになります。


具体的な練習として、狭いスペースを想定し、麻痺のある足を軸にして360度方向転換をする練習や、後ろに3、4歩ほど下がる練習をおすすめしています。


さらに一歩進んだ練習として、普段ご自身が心地よいと感じる自然なペースよりも、倍くらいの速さで向きを変えたり、後ろに下がったりする練習を取り入れます。


これは速い動きに対応する筋肉を呼び覚ますためです。日頃から少し速い動きを経験しておくことで、いざ少し急がなきゃという場面に直面した時、焦る気持ちに体がしっかりついてきてくれるようになります。


ぜひ、担当の理学療法士と一緒に安全な環境でチャレンジしてみてください。


外の世界のスピードに、無理にご自身の体を合わせる必要はありません。


ご自身が安心できる立ち位置を見つけ、日々の練習で培った動きを信じること。


そして時には、一本見送る心の余裕を持つことが、転倒を防ぎ、お出かけの楽しさを守ってくれます。


私たちはいつでも、あなたの絶対的な味方として、その毎日の勇気ある一歩をすぐそばで心から応援しています。


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