また旅に出よう。脳卒中のあとの帰省と旅行を安心して楽しむために
- 7月1日
- 読了時間: 7分
更新日:7月15日
お盆や連休が近づくと、ふるさとに帰りたい、家族でどこかへ出かけたいという気持ちがわいてきますね。
脳卒中を経験されると、移動の不安から旅行をあきらめてしまう方も少なくありません。
けれども、少しの準備と工夫で、旅は十分に楽しめます。
今日は新幹線、お手洗い、温泉旅館、飛行機の四つの場面に分けて、安心して出かけるためのコツをお伝えします。
新幹線のこと
新幹線には、体の不自由な方のための車いす対応座席と多目的室が用意されています。
多目的室は横になって休める個室で、体調がすぐれないときの心強い味方です。
利用したいときは、みどりの窓口や電話できっぷを予約するときに伝えておくと安心です。
座席はデッキやお手洗いに近い場所を選ぶと、移動が短くてすみます。
通路側にすれば、立ち座りも楽になります。
駅では、乗り降りを手伝ってくれる係の方にお願いすることもできます。
重い荷物は足元や近くの荷物棚にまとめ、健側の手があくようにしておくと安心です。
ホームのエレベーターの位置を先に確かめておくと、当日あわてずにすみます。
乗り降りには思ったより時間がかかることもあるので、発車までゆとりを持ってホームに着くようにしましょう。
障害者手帳をお持ちの方は、ご本人や付き添いの方の運賃が割引になることもあります。
予約や購入のときに、駅の窓口でいちど尋ねてみてください。
乗る駅で介助をお願いしておくと、降りる駅の係の方へ引き継いでくれるので、乗り換えのあるときも安心です。

お手洗いのこと
駅や車内には、手すりが付いて中が広い多目的トイレがあります。
健側の手で支えられる向きを意識して入ると、より安心して使えます。
多目的トイレは数が限られていることもあるので、見かけたら早めにすませておくと安心です。
スマートフォンの地図アプリで、近くのバリアフリー対応のお手洗いを探しておくのもよい方法です。
旅先では、お手洗いの場所をあらかじめ調べておくと、いざというときに慌てません。
外出のときは水分をひかえがちですが、夏は脱水も心配です。
こまめに水分をとること、行き先ごとにお手洗いの位置を確かめておくこと。
この二つを心がけるだけで、移動の負担がぐっと軽くなります。
便意や尿意は、がまんせず早めにすませておくのが安心です。
朝のうちにいちど行っておくと、移動中の心配が少なくなります。
温泉旅館のこと
旅の楽しみといえば、やはり温泉ですね。
浴室は床がぬれて滑りやすく、段差もあるので、いちばん気をつけたい場所です。
予約のときに、手すりの有無やバリアフリーのお部屋があるかを尋ねておきましょう。
人目が気になる方は、貸切風呂や客室の露天風呂がある宿を選ぶと、ご家族とゆっくり過ごせます。
シャワーチェアを貸してもらえるかどうか、聞いておくのもよい方法です。
お部屋はエレベーターに近い階にしてもらえるか、食事は椅子とテーブルの席にできるかも、あわせて相談しておくと過ごしやすくなります。
長湯はのぼせや血圧の変動につながるので、短めに区切って、こまめに休みながら楽しんでください。
お風呂のあとは、水分をとってひと息つく時間も忘れずに。
脱衣所と浴室の温度差は、血圧の急な変化につながることがあります。
寒い時季は、脱衣所をあたためてから入るとより安心です。
湯船の出入りは、手すりやご家族の手を借りて、あわてずゆっくりとおこないましょう。
飛行機のこと
遠くへ出かけるときは、飛行機も頼れる味方です。
空港には、車いすでの移動や搭乗をお手伝いするサービスがあります。
予約のときや出発前に航空会社へ連絡しておくと、保安検査から搭乗まで落ち着いて進めます。
装具は付けたままで構いませんが、金属探知機で音が鳴ることがあるので、係の方にひとこと伝えておくと安心です。
お薬は預け荷物に入れず、手元のかばんに分けて持っておくと、機内でも安心です。
機内の通路は狭いため、お手洗いに近い席や、早めの搭乗を希望しておくとよいでしょう。
搭乗ゲートまでは思いのほか距離があることもあるので、車いすやカートの案内を遠慮なく頼ってください。
長く座っていると足がむくみやすいので、ときどき足首を回したり、かかとを上げ下げしたりしながら、こまめに水分をとりましょう。
窓側よりも通路側の席にしておくと、立ち座りやお手洗いへの移動が楽になります。

出かける前の共通の心がけ
どの乗り物を使うときも、共通して大切なのは、ゆとりのある日程です。
予定を詰め込みすぎず、休む時間をあらかじめ組み込んでおきましょう。
荷物は健側の手で持てる量にとどめ、キャリーケースを転がすようにすると体への負担が減ります。
朝は血圧や痙縮の具合を確かめ、無理だと感じた日は予定をずらす勇気も大切です。
お薬は少し多めに、装具の予備も忘れずに用意しておくと安心です。
お薬手帳や、かかりつけの連絡先をひかえておくと、旅先で体調を崩したときも落ち着いて動けます。
旅行先の近くにある病院をひとつ調べておくと、より心強いでしょう。
移動には、車いすのまま乗れる福祉タクシーという選択肢もあります。
前もって予約しておくと、駅から宿までの道のりがぐっと楽になります。
万一にそなえて旅行保険に入っておくと、気持ちの余裕がちがいます。
ご家族で出かけるときは、荷物を持つ人、付き添う人と、役割をゆるやかに分けておくと、みんなが無理なく過ごせます。
出かけることが、なによりのリハビリ
ここで、ひとつお伝えしたいことがあります。
日帰りでも、新幹線に乗って出かけて帰ってくる。
たったそれだけで、いつもより体力がつき、耐久性が高まって、見ちがえるほど元気になる方がいらっしゃいます。
車いすで移動するとしても、出かけるという充実感は格別です。
安定した乗り物であっても、体は前後左右にゆれます。
その揺れに数時間耐えること自体が、じつは立派な耐久性のリハビリになっているのです。
気持ちの張りと体の力、その両方が同時に育っていきます。
これはリハビリに限った話ではありません。
舞台の稽古でも、スポーツの練習でも、十回の稽古より一度の本番、何十回の練習より一度ステージに立つことのほうが、人を大きく成長させると言われます。
リハビリもまったく同じです。
旅は、その一度の本番にあたります。
その一回が、その方の回復を大きく左右することがあります。
だからこそ、できない理由を探すより、出かけられる理由をたくさん見つけてほしいと思います。
ご家族だけでは支えきれないときは、看護師やヘルパー、リハビリの専門職が同行してくれる自費のサービスもあります。
こうした支えは、ずいぶん充実してきました。
上手に調べて頼れば、日帰りだけでなく、泊まりの旅行も叶えられます。
どうか前向きに、できる理由を見つけていってください。
はじめての外出は、近場の日帰りから始めてみるのがおすすめです。
短い距離で自信がついてくると、次はもう少し遠くへと、行ける範囲が自然と広がっていきます。
旅は、体だけでなく心にも栄養をくれます。
大切なのは、頑張りすぎず、自分のペースを守ることです。
困ったときは、遠慮なく周りの方やサービスに頼ってください。
行ってみたいという気持ちは、それだけで回復への大きな力になります。
この夏、あなたとご家族にとって、忘れられない一日が生まれますように。
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