脳卒中の予後と予測
- 株式会社 MARUHA MEDICAL
- 3月25日
- 読了時間: 4分

脳卒中は、日本国内で毎年約30万人が発症するとされており、高齢化が進む中でその影響はますます大きくなっています。
一度発症すると、運動麻痺や感覚障害、高次脳機能障害などの後遺症が残ることが多く、「その後どの程度改善できるのか?」ということが患者や家族にとって最大の関心事になります。
しかし、脳卒中の予後は一概に決められるものではなく、様々な要因が複雑に絡み合って変化します。
今回は、脳卒中の予後を決める要因やリハビリの重要性、さらに自費リハビリの活用によってより良い改善を目指す方法について詳しく解説します。
脳卒中の種類と予後
脳卒中は、主に以下の3つのタイプに分けられます。
(1) 脳出血
脳の血管が破れて出血することで発症します。出血量や発生場所によって症状は異なり、大量出血の場合は命に関わるリスクが高く、機能改善が難しくなる傾向があります。
ただし、小さな出血の場合は、時間の経過とともに吸収されて後遺症が軽減されることもあります。
(2) 脳梗塞
脳の血管が詰まることで血流が途絶え、脳の組織がダメージを受けるタイプの脳卒中です。
発症からの時間が重要で、4.5時間以内にt-PA(血栓溶解療法)を受けられるかどうかが、その後の予後に大きく影響します。脳梗塞の範囲が広い場合、運動麻痺や高次脳機能障害が重度になることがあります。
(3) くも膜下出血
脳の表面にある動脈瘤が破裂し、脳を包む「くも膜下腔」に出血が広がる状態です。
多くの場合、手術(クリッピング術やコイル塞栓術)が必要になることもあります。手術後も血管れん縮による二次的な脳梗塞が発生するリスクがあり、慎重な経過観察が求められま
予後を決める主な要因
(1) 発症からの時間と初期治療
「脳卒中は時間との勝負」と言われるように、発症から治療開始までの時間が短いほど予後が良くなる傾向があります。例えば、脳梗塞の場合、4.5時間以内にt-PAを投与することで後遺症が軽減される可能性があります。
(2) 損傷を受けた脳の部位
脳卒中の影響は脳のどの部位がダメージを受けたかによって異なります。
1.大脳皮質(前頭葉・側頭葉・後頭葉・頭頂葉)
• 前頭葉(運動・判断・意欲の中枢) → 意欲低下・判断力の低下・感情のコントロール障害
• 側頭葉(記憶・言語の中枢) → 記憶障害・言語理解の障害(ウェルニッケ失語)
• 後頭葉(視覚の中枢) → 視野欠損・視覚認識の障害
• 頭頂葉(空間認識・感覚の中枢) → 空間認識障害・手足の位置感覚の低下
2.視床(感覚のリレーセンター)
• 強いしびれや視床痛を引き起こすことがある。
• 感覚障害が長期間残ることもある。
3.小脳(運動の調整)
• 平衡感覚の低下・ふらつき・協調運動障害(失調症)
• 長期的なリハビリが必要。
4.脳幹(延髄・橋・中脳)
• 呼吸・心拍の調整に関与し、重篤な状態を引き起こすことが多い。
• 四肢麻痺や言語障害などの後遺症が残ることがある。
予後を良くするためにできること
(1) 適切なリハビリの継続
リハビリの内容には、以下のような種類があります。
• 理学療法(PT):歩行訓練、筋力強化、バランス訓練など。
• 作業療法(OT):高次脳機能障害、日常生活動作(ADL)の訓練など。
• 言語療法(ST):失語症、嚥下訓練など。
(2) 社会復帰を目指したプログラムの実施
• 高次脳機能障害は2~5年かけて改善するケースもあり、長期的な取り組みが必要。
• 特に、社会との関わりが回復を左右するため、積極的な参加を推奨。

発症から5年が経過。正面の位置を左上に誤認している状態。

リハビリ開始から1年が経過し、正面の位置をほぼ正しく認識できるようになった状態。
高次脳機能障害は、このように適切なリハビリを継続することで、徐々に改善していくケースが多く見られます。
自費リハビリの活用とメリット
(1) 自費リハビリの活用
医療や介護保険では、リハビリを受けられる時間や回数に制限があります。そのため、改善を最大限に引き出すためには自費リハビリの活用が有効です。
(2) 自費リハビリのメリット
• 制限なくリハビリを受けられる(週3回以上のリハビリが可能)
• 熟練した専門的な技術と知見を持つセラピストによる予後を予測した個別プログラム
• 最新のリハビリ手法(CI療法、ボバース法、PNFなど)の導入
まとめ
脳卒中の予後は、「発症後の対応」「損傷した部位」「リハビリの質」「社会参加」など多くの要因に左右されます。保険診療だけでは十分なリハビリが受けられないケースが多いため、より専門的なリハビリを求める場合は「自費リハビリ」の活用を検討するのも一つの方法です。
適切な治療とリハビリを継続し、日常生活や社会とのつながりを大切にしながら、より良い生活を目指しましょう。
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