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【病態別】第14回:くも膜下出血のリアルと向き合う。長期戦のマラソンを共に走るチームとして

  • 3 日前
  • 読了時間: 5分

【病態別】第14回:くも膜下出血のリアルと向き合う。長期戦のマラソンを共に走るチームとして

ある日突然、バットで殴られたような激しい頭痛に襲われる。


昨日までの穏やかで当たり前だった日常が何の予告もなく途切れる。


くも膜下出血は、発症したご本人はもちろんのこと、支えるパートナーやご家族の人生にも想像を絶する衝撃をもたらす疾患です。


命の危機を脱した直後から、ご家族は横たわるご本人を目の前にして、「これからどうなるのか」「どう支えていけばいいのか」と、終わりの見えない不安の中で必死に情報を探されていることと思います。


これまでの連載で、脳卒中には大きく分けて「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3種類があるとお伝えしてきました。


その中でもくも膜下出血は、他の2つとは明確に区別して理解する必要があります。


脳梗塞とくも膜下出血の違い

脳梗塞が血管の詰まり、脳出血が脳の中の細い血管の破れであるのに対し、くも膜下出血は脳の表面を覆う膜の隙間にある動脈瘤などが破裂して起こります。


発症と同時に脳全体に強いダメージが及ぶため、非常に致死率が高く、命を落とすリスクが極めて高い病気です。


そして、懸命な治療で命を取り留めた後の経過には、実は非常に大きな幅があるという事実を、まずは知っていただく必要があります。


ほとんど障害を残すことなく、見事に社会復帰を果たされる方が大勢いらっしゃいます。その一方で、重度の介護を必要とするケースも決して少なくありません。


同じ「くも膜下出血」という病名であっても、どのような症状が現れ、どのような経過をたどるのかは、一人一人全く異なるのです。


病名だけで「もう元の生活には戻れない」と諦めたり、逆に誰かと比べて焦ったりすることはできません。


この大きな幅があるという事実を理解した上で、目の前にある現実とどう向き合い、どのようなリハビリを進めていくかが何よりも大切になります。


命が助かったという安堵の後、ご本人とご家族は多様な症状と向き合います。


手足の運動麻痺に加えて、新しいことが覚えられない、注意力が散漫になる、感情のコントロールが難しくなるといった「高次脳機能障害」が顕著に現れることがあります。


これらは目に見えにくい障害だからこそ、周りからの理解が得られにくく、ご本人が深い孤独を感じやすいという特徴を持っています。


さらに重度の介護が必要になった場合、言葉でのコミュニケーションが非常に困難になることがあります。


しかし、そんな中でも、かすかな頷きや目の動き、瞬きなど、ご本人からの小さなサインに最も早く気づけるのは、やはりご家族です。


一番近くで、誰よりも長い時間を共に過ごしているパートナーやご家族だからこそ、外部の人間には見つけられないコミュニケーションの糸口を発見できる可能性が非常に高いのです。


くも膜下出血の在宅リハビリや介護の最前線

くも膜下出血の在宅リハビリや介護の最前線

ここで一つ、在宅リハビリや介護の最前線でよく起こるリアルな問題をお伝えします。


ご家族がその小さなサインを見つけた時、「この人のことは私たち家族にしかわからない」という思いが強くなることがあります。


その深い愛情ゆえに、外部のサービス提供者に対して「なぜ気づけないのか」「もっとわかってほしい」と求める水準が高くなり、コミュニケーションのすれ違いが生じます。


時にはそれが原因で関係性が崩れ、外部のサービス事業者が支援を継続できなくなり、撤退に至るケースも実際に存在します。


どうか、ご家族だけで抱え込まず、その「気づき」を私たち専門家と共有してください。


訪問リハビリやデイサービス、ショートステイのスタッフなど、関わる人間すべてを一つの「チーム」として考えることが重要です。


ご家族が見つけた小さなサインをチーム全体で共有し、同じ目線でサポートを続けることで、ご本人の生活の質は確実に上がっていきます。


ご家族と外部のサービスが手を取り合うことが、ご本人を守る一番の力になるのです。


臨床の現場に携わる中で、ご家族が深い「介護疲れ」を抱えるケースを数え切れないほど見てきました。


愛する人のためにと必死に介護を続けるうちに、ご家族自身の心と体が限界を迎えることは珍しくありません。


では、ご家族の負担を減らすために施設への入所を選択すればすべて解決するのかというと、現実はそう単純ではありません。


施設での生活は安全が確保される一方で、活動量が極端に減り、結果として活力を失い、最期の時を迎える時期が早まるケースも多く存在します。


在宅介護の疲弊と、施設入所による機能低下

在宅介護の疲弊と、施設入所による機能低下

この板挟みの中で苦しまないためにも、くも膜下出血後のリハビリは、短距離走ではなく「長期戦のマラソン」であるという認識が必要です。


改善への大きな糸口となるのは、「社会とのつながりを確保すること」です。なるべく家の中で閉じこもらずに、デイサービスや訪問リハビリのスタッフとの会話、地域の人々との交流など、外の世界と関わりを持つことが、脳への刺激となり、生きる意欲を取り戻す強力な原動力になります。


この終わりの見えないマラソンを、決してご家族だけで走り抜こうとしないでください。


私たち専門家の知識と技術は、ご本人の機能回復のためだけにあるのではありません。


ご家族が抱える重い荷物を一緒に背負い、介護の疲れや不安、誰にも言えない弱音を受け止めるために存在しています。


「今日は昨日より少しだけ目の動きが違った」「かすかに頷いてくれた」。


そんな「1ミリの積み重ね」を共に見つけ、喜びを分かち合う伴走者として、どうか私たち専門家を大いに頼ってください。


長期戦のマラソンを、しっかりとチームで横を走り続けます。


焦らず、少しずつ、一緒に前へ進んでいきましょう。


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