「ごめんね」と「ありがとう」の間で、脳卒中後の家族との「新しい関係」の築き方
- 株式会社 MARUHA MEDICAL
- 3 日前
- 読了時間: 10分

その「ごめんね」、いつから聞くのが辛くなりましたか?
「ごめんね、また失敗しちゃった」 「ごめんね、いつも迷惑ばかりかけて」
ご本人が、ふと口にする「ごめんね」という言葉。
「そんなことないよ、気にしないで」 「大丈夫だよ」
そう返すあなたの心は、本当に「大丈夫」でしょうか。 最初は優しく受け止められていたその言葉が、いつからか、聞くたびにあなたの心を重くし、イライラさせ、疲弊させてはいないでしょうか。
あるいは、ご本人も。 本当は「ありがとう」と言いたいのに、申し訳なさが先に立ち、「ごめんね」という言葉ばかりが口をついて出てしまう。
そして、その言葉が、ご家族の表情を曇らせていくことに気づき、さらにご自身を責めてしまう。
脳卒中という大きな出来事を境に、それまで当たり前だった夫婦や親子の関係が、「患者」と「介護者」という、重苦しい役割に変わってしまった。
この記事は、そんな「ごめんね」と「ありがとう」の狭間で、出口が見えずに苦しんでいる、ご本人と、そして何より、一人で支えようと頑張りすぎているご家族、あなたのためだけに書きました。
なぜ、あんなに仲が良かった家族が、ギクシャクしてしまうのか。
その理由と、その重い空気から抜け出すための、具体的な「最初の一歩」について、じっくりとお話ししたいと思います。
第1章:「ごめんね」という言葉の、見えない裏側
まず、ご家族に知っておいてほしい、非常に重要なことがあります。
それは、ご本人が口にする「ごめんね」が、必ずしもあなたが想像する「申し訳ない」という本心だけとは限らない、ということです。
脳卒中は、手足の麻痺だけでなく、私たちの「思考」や「言葉」そのものにも、目に見えないダメージを与えることがあります。
例えば、「失語症」という症状があります。
これは、言いたい言葉が、頭に浮かんでいても、違う言葉になって出てきてしまう症状です。
本当は「ありがとう」と心から感謝しているのに、口から出てくる言葉が、なぜか「ごめんね」という言葉ばかりになってしまう、というケースも実際にあります。
また、「高次脳機能障害」の影響で、物事の考え方や感情のコントロールが難しくなり、ご本人自身もその変化に戸惑い、不安のあまり「ごめんね」という言葉に頼ってしまうこともあります。
もちろん、純粋に「家族に迷惑をかけて申し訳ない」という、切実な本心から出る「ごめんね」も、たくさんあるでしょう。
大切なのは、ご家族が「また『ごめんね』だ…」とイライラする前に、一歩立ち止まって、「今の『ごめんね』は、どの『ごめんね』だろう?」と考える余裕を持つことです。
その言葉の裏にある、ご本人の本当の気持ちや、病気による症状を少しでも理解しようとすること。
それだけで、ご家族の心の受け止め方は、大きく変わってくるはずです。
第2章:なぜ、病院で「完璧」だった家族が、在宅で豹変してしまうのか

この話をすると、多くのご家族がハッとされます。
そして、セラピストにとっても、非常に難しい問題がここにあります。
入院中、私たちはご家族の対応も注意深く観察しています。
「奥さん、本当に献身的で、いつも笑顔でご主人を励ましている」 「このご家族なら、退院しても安心して任せられる」 私たちは、そう判断して、ご自宅へとお送りします。
しかし。在宅生活が始まって1ヶ月後、訪問してみると、あれほど優しかった奥様が、ご本人に対して信じられないほど冷たい言葉を浴びせていたり、疲れ果てた表情で、明らかに「豹変」してしまっていたりする。
こうしたケースは、残念ながら、決して少なくありません。
なぜ、こんなことが起こるのでしょうか。
それは、そのご家族が冷たい人だったから、ではありません。 多くの場合、理由は二つあります。
一つは、「こんなはずじゃなかった」という、現実の重さによるキャパオーバーです。
病院という管理された環境と、24時間365日、たった一人(あるいはご家族だけ)で向き合わなければならない在宅生活とは、全くの別物です。
その現実に直面し、心が折れてしまうのです。
もう一つの理由は、病院で見せていた姿が、そのご家族の「外面」、つまり、周りの目を気にした「頑張っている姿」だった、という可能性です。
(外面が悪い、という意味では決してありません。誰もが、医療者の前では「良い家族」であろうと努めてしまうものです)
本当はご自身も短気で、几帳面ではなく、介護に自信がなかった。
でも、「ちゃんとしなきゃ」と無理をしていた。
その無理が、在宅という逃げ場のない環境で、一気に限界を超えてしまうのです。
もし、あなたが今、まさにこの「豹変」しかけている自分に気づき、自己嫌悪に陥っているのなら。どうか、ご自身を責めないでください。
そして、これから入院・退院を迎えるご家族には、私から強くお伝えしたいことがあります。
入院中に、医療者に「良い家族」を演じる必要は、一切ありません。
むしろ、「私は短気なんです」「夫とは昔からよく喧カしていました」「私、大雑把なので、細かい管理は自信がありません」と、ご自身の「元々の性格」や「弱さ」を、正直に開示してください。
私たちは、その「弱さ」を知って初めて、「このご家族には、こういうサポートが必要だ」「この部分はお手伝いさんを入れよう」と、あなたの家族に合った、本当に現実的な在宅プランを一緒に考えることができるのです。
第3章:あなたが「キャパオーバー」になる、その前に。
今日からできる「最初の一歩」とはいえ、今まさに、ご自宅でキャパオーバーになり、ご本人の「ごめんね」にイライラしてしまっているご家族は、どうすればいいのでしょうか。
「ありがとうに変換しましょう」なんて、綺麗な言葉をかけるつもりはありません。そんな心の余裕は、もう残っていないはずです。
その苦しい悪循環から抜け出すために、まず「最初の一歩」として、あなた(ご家族)自身を守るために、最も現実的で、具体的な行動をお伝えします。
それは、「訪問スタッフが帰る間際の玄関先でそっと伝える」ことです。
在宅生活には、ケアマネジャーさんや、訪問看護師さん、訪問リハビリのセラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)など、様々な専門家が関わっていると思います。
しかし、彼らに「助けて」と伝えるのは、とても言いにくい環境なのです。
なぜなら、リハビリや看護の支援は「ご本人がいる前」で行われるからです。
「主人の『ごめんね』を聞くのが辛くて…」なんて、ご本人の目の前で言えるわけがありません。
だから、あなたは一人で抱え込んでしまう。
その状況を打破する、唯一にして最大のチャンス。
それが、訪問スタッフが「ありがとうございました」と帰っていく、あの「玄関先」での数秒間です。
ご本人がリビングにいる、その時。 スタッフに「ありがとうございました」と見送りがてら、玄関のドアを閉める直前に、そっと伝えましょう。
「実は、先生。もう、限界なんです」 「主人の前では言えないんですけど、私、イライラが止まらなくて…」
たった、その一言でいいのです。
もし、その訪問スタッフが、「察しの良い」プロフェッショナルであれば、その一言の裏にある、あなたのSOSの重さを瞬時に理解します。
そして、その日の帰り道、すぐにケアマネジャーさんに電話をかけ、「奥様が限界だ。このままでは共倒れになる。プランを見直そう」と、水面下で動いてくれることが多いです。
彼らは、単なるリハビリやケアをするためだけに来ているのではありません。
あなたのご家庭が崩壊しないように、生活全体を見守るのも彼らの仕事です。
彼らは、同じようなご家庭を、文字通り何百と見てきています。 あなたが今直面している苦しみは、決して特別なことではなく、彼らが「すでに知っている」苦しみなのです。
生まれて初めての出来事に、たった一人で対応できるわけがありません。
それは当然のことです。だから、どうか「人に頼れない」と頑張りすぎないでください。「玄関先でのSOS」。
それが、あなたの家族を救う、最も現実的で、最も勇気ある「最初の一歩」です。
第4章:家族を「患者と介護者」から「チーム」に変える、専門家の技術

あなたが「玄関先」で、勇気を出して悩みを打ち明けてくれたとして。
そのSOSを、訪問スタッフが正しく受け止め、状況を変えるために動いてくれるでしょうか。
ここで、ご家族に知っておいてほしい、少し困った現実もあります。
それは、「リハビリの専門家にも、タイプ(得意分野)がある」ということです。
世の中には、「治療や施術(せじゅつ)」、つまり麻痺した手足の筋肉をほぐしたり、関節の動きを良くしたりすることに情熱を注ぎ、非常に高い技術を持つ素晴らしいセラピストがたくさんいます。
しかし、そのセラピストが、「ご家族の心の負担」や「ご家庭の雰囲気」まで目を配れているかというと、残念ながら、必ずしもそうとは限りません。
「体の治療や施術」にこだわるあまり、その「生活全体」のサポートまで手が回らない、というケースも少なくないのです。
では、私が理想とする「トータルで見られる」ベテランのセラピストは、何が違うのでしょうか。
それは、ご家族を「介護者」という重い役割から解放し、ご家族にしかできない「一番の応援団」という役割に戻っていただくための、「きっかけ」を演出する技術を持っていることです。
例えば、リハビリの結果、ご本人が昨日より少しだけ長く立てるようになったとします。
多くのセラピストは、ご本人に「立てるようになりましたね、すごい!」と声をかけます。それは、もちろん素晴らしいことです。
しかし、「トータルで見られる」セラピストは、その瞬間、そばで見ているご家族(奥様)に向かって、こう声をかけるかもしれません。
「奥さん。ご主人は以前より10秒長く立てるようになりましたね。
もう少し改善すると、トイレの介助の時、もっと落ち着いてできるようになりますね。本当にありがたいことですよね!」
こう言われると、奥様は、どうでしょう。
昨日まで「ごめんね」と謝るご主人の介助に疲れ果てていたとしても、その瞬間、「本当だわ、すごく助かる!ありがとう!」と、心の底から、ご本人に自然な笑顔を向けることができるのではないでしょうか。
ご本人も、気づくのです。 自分は、家族に「ごめんね」と謝るだけの、迷惑をかける存在ではない。
自分がリハビリを頑張ることが、家族を助け、「ありがとう」と言われる存在になれるんだ、と。
この、リハビリの成果を「ご本人の努力」としてだけでなく、「家族全員の喜び」として演出すること。
ご本人を、「ごめんね」という立場から、「ありがとう」と言われる立場へと引き上げること。
この技術こそが、ご本人の意欲と自立を劇的に引き出し、ご家庭の重い空気を変える、専門家が持つ本当の価値なのです。
おわりに:あなたの家族を、もう一度「家族」に戻すために。
ご家族だけで、この「患者と介護者」という、一度固定化してしまった重い役割分担を変えていくのは、本当に、本当に難しいことです。
もしあなたが今、「もうキャパオーバーだ」と感じているなら、 まず、勇気を出して「玄関先」で訪問スタッフにSOSを伝えてみてください。
世の中には、あなたの家族全体を、もう一度「チーム」として捉え直し、その関係性まで含めてトータルでサポートしようと本気で考えている専門家が存在するということを。
あなたの「ごめんね」が「ありがとう」に変わる日は、専門家の選び方一つで、必ずやってきます。
あなたの家族が、もう一度、ただの「家族」に戻れる日を、私は心から応援しています。
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