熱帯夜が続き、寝ても寝た気がしない。朝、体が重い。そんな夜が増える季節です。健康な頃なら一晩ぐっすり眠れば取り戻せた疲れが、脳卒中を経験されたお体では、そう簡単には抜けてくれないことがあります。

しかも片麻痺のお体にとって、夏の夜は「ただ暑くて寝苦しい」だけでは終わりません。眠れないことが翌日の動きにまで尾を引き、リハビリの調子そのものを左右します。今日はその話をさせてください。

なぜ片麻痺だと夏の夜がつらいのか

汗をかいて体温を下げる働きは、脳からの信号でコントロールされています。脳卒中でその通り道が傷つくと、麻痺のある側は熱をうまく逃がせず、体に熱がこもりやすくなります。夜、横になっても体の芯がほてったまま下がらない。これが寝つきの悪さや、夜中に目が覚める原因のひとつです。

さらに、自律神経の乱れで体温が下がりきらないと、眠りそのものが浅くなります。人は眠るときに体の内側の温度がすっと下がることで深い眠りに入るのですが、その切り替えがうまくいかなくなるのです。

眠れない夜が、翌日の体を固くする

睡眠が足りないと、次の日に響くのはだるさだけではありません。麻痺側のこわばり(痙縮)は、疲れや寝不足でひどくなりやすいことが知られています。ぐっすり眠れなかった朝ほど、手足が突っ張って動きにくい。そう感じる方は少なくありません。

私が現場で長くみてきても、同じことを感じます。こわばりは強い相手ですが、毎日こつこつ向き合っていれば、動かせる範囲は少しずつ追いついてきます。逆に、寒さや疲れがたまった日ほど突っ張りは強く出ます。だからこそ、しっかり眠って体を休められた朝は、それだけで動き出しがずいぶん楽になるのです。眠りは、次の日のリハビリの土台そのものだと考えています。

夏の寝苦しさと片麻痺 〜眠れない夜がリハビリにひびく前に〜

体が重い、こわばる、という状態は、そのまま立つ・歩く意欲の低下や、ふらつきによる転倒のリスクにつながります。眠れない、翌日動けない、さらに疲れる。この悪循環に入りやすいのが、夏の片麻痺のお体なのです。

エアコンは一晩じゅう、味方につける

寝るときに冷房は体に悪いと、タイマーで途中で切る方が多くいます。けれど熱帯夜は、切れたとたんに部屋の温度が上がり、そこで目が覚めてしまいます。夏の夜は、設定温度を二十六から二十八度くらいにして、朝までつけっぱなしにするほうが、かえって体を守ってくれます。

麻痺のある側は暑さに気づきにくく、本人は寒いと言うのに部屋はかなり暑い、ということも起こります。冷やす、冷やさないでご家族と意見が分かれたときは、頭ごなしにならず、どうして冷やしたほうがよいのかを優しく伝えて、お互いが心地よい一点を一緒に探してください。

寝る前のひと工夫で、眠りは変わる

眠りの質は、寝る前の過ごし方で大きく変わります。おすすめは、寝る一、二時間前に、ぬるめのお湯にゆっくり浸かること。いったん上がった体温が下がっていくタイミングで、自然と眠気がやってきます。

寝床では、麻痺側の腕や脚の下に薄いタオルやクッションを添えて、つっぱりにくい楽な位置を作ってあげると、夜中のこわばりや脚のつりをやわらげられます。ひんやりする冷感シーツや、汗を吸う綿の寝具も、寝つきを助けてくれます。

夏の寝苦しさと片麻痺 〜眠れない夜がリハビリにひびく前に〜

夜中のトイレは、転倒の多い時間帯

寝る前の水分は、脱水を防ぐうえで大切です。ただ、飲みすぎると夜中に何度もトイレに起きることになり、寝ぼけた足元でのふらつきが心配です。夏の夜間は、転びやすい時間帯でもあります。

コップ一杯を目安にして、それ以上は日中に前倒しで飲んでおく。トイレまでの通り道の物をよけておく。足元にやわらかい明かりを一つ置いておく。この小さな備えが、夜の安心につながります。

ご家族へ:夜のサインに気づいてください

寝汗でパジャマがぐっしょり濡れている、朝なかなか起きられずぼんやりしている、日中うとうとする時間が増えた。こうした様子は、夜しっかり眠れていないサインかもしれません。寝室の温度を一度見にいってあげてください。本人が気づけていない暑さを、そばの一声が救うことがあります。

専門職として

私たち専門職は、こうした体温調節や睡眠の変化を前提に、その方のお体に合った夏の夜の過ごし方をお伝えしています。エアコンの使い方、寝る前の入浴、寝る姿勢の工夫。ご自宅の環境に合わせて、一緒に整えていきます。

眠れない夜が続くと、心細くなるものです。その不安を一人で抱えず、いつでも私たちを頼ってください。科学的な視点と、あなたに寄り添う心で、ぐっすり眠れる夏の夜を、すぐそばで応援し続けます。

📌 無料 脳卒中リハビリ相談 「NIDE脳卒中リハコンサルティング」 のご案内

📌 「NIDE脳卒中歩行アカデミー」 のご案内

📌 書籍 『親が脳卒中になったとき 家族が最初に読む本』 のご案内

#脳卒中 #脳梗塞 #脳出血 #片麻痺 #リハビリ #理学療法士 #訪問リハビリ #夏の睡眠 #寝苦しさ #不眠 #熱帯夜 #自律神経 #痙縮 #脳卒中サバイバー #家族のサポート