実家を出て、駅へ向かう道で一度だけ振り返る。玄関の前で手を振る親の姿が、少しずつ小さくなる。会えてよかった、思ったより元気だった。そう思いながら席に着く。

前回は、帰省中に見ておきたいことをお伝えしました。今日はその続きです。お盆が明けたころから、ご相談が増えます。お盆の前は普通に歩いていたのに、電話の声がなんとなく違う。9月に入って会いに行ったら、杖の突き方が変わっていた。

休みで抜けたのは、予定です

お盆の数日から1週間、デイサービス、訪問リハビリ、通院の多くが止まります。寝込んでいたわけではありません。それでも、出かける用事、着替える用事、人と話す用事が、まとめて抜けます。

1日にどれだけ動くかは、やる気ではなく予定が決めています。予定が抜けた分だけ、体を使う時間が減る。ぎりぎりの体力で毎日を回している方にとって、この1週間は小さくありません。

だから、戻すのは気合いの話ではありません。段取りの話です。

離れてからは、耳で確かめます

帰省中は目で見られました。帰ったあとは、電話で確かめます。歩き方は声に出ませんが、暮らしぶりは声に出ます。

呼び出し音が何回鳴ってから出たか。話しているうちに息が続かなくなる感じはないか。昨日、家の外まで出たか。どこまで行ったか。

答えの中身よりも、前の電話と比べてどうか、です。前回お伝えした「いつからか」という時間の軸は、離れてからのほうがよく効きます。週に一度、同じ曜日の同じ時間にかけると、比べやすくなります。

戻すときは、強さより回数を先に増やします

1週間抜けたのだから、その分を取り返そう。お気持ちは分かります。ただ、いきなり前の量に戻すと翌日に響いて、かえって動かない日が増えます。

落ちているのは筋力だけではありません。1日を通して動き続ける体力のほうが、先に落ちます。

私は現場で、強度より頻度を先に戻すように組み立てています。長い距離を一度歩くより、短くていいので回数を増やす。まず玄関まで、次に門のところまで、その次に角まで。椅子からの立ち座りも、一度に何十回とやらず、朝と昼と晩に分けます。1日を過ごせる体力が戻ってきてから、距離や時間を伸ばしていく。この順番です。

お盆明けと片麻痺 〜休みで抜けた分の戻し方には、順番があります〜

何をどこまでやってよいかは人によって違います。再開の日に、担当の理学療法士やケアマネジャーへ一度ご確認ください。

「疲れているから今週は休みます」が、いちばん惜しいところです

お盆明けにいちばん多いのが、これです。しんどそうだから、回数を減らしてあげよう。優しさから出た判断ですが、ここは逆に働きます。

週2回を週1回に減らすと、月に8回あった機会が4回になります。そのうち2回休めば、残るのは2回です。週2回のままなら、4回休んでも4回残ります。

回数はそのままにして、しんどい日は休む、早めに帰る。このほうがリズムは崩れません。行けた日と行けなかった日が、そのまま体調のものさしにもなります。見てもらえる目も減りません。

戻すには、材料が要ります

夏の疲れが残っている時期は、食が細くなります。動く量を戻しても、材料が足りなければ体はついてきません。

3食でお腹がいっぱいにならない方には、あいだの補食をおすすめしています。年齢を重ねた方にとって、おやつは楽しみというより補食です。カステラでも、どら焼きでも、シュークリームでもかまいません。ご飯だと入らない方には、小さめのおにぎりを何回かに分けて。

水分も続けて見てください。残暑はお盆で終わりません。汗のかき方が左右で違う体は、9月に入ってもまだ夏のままです。

再開の週に、伝えることは一つです

お盆明けは、デイサービスも訪問リハビリも通院も、一斉に再開する週です。ここが分かれ道になります。

伝えることは一つで足ります。いつから、どう変わったか。お盆の前は玄関まで一人で行けていたのが、2日前から手すりを使うようになった。この一行が言えれば十分です。担当者はそこから、様子を見るのか、主治医へつなぐのかを決められます。

原因を決めるのはご家族の仕事ではありません。気づいたことは、そのまま渡してください。

急な変化のときは、電話より先に119番です。前回お伝えした、突然の顔のゆがみ、片方の手足に急に力が入らない、ろれつが回らない。どれかが出たら、迷わず救急車です。

休みで抜けた分は、1日で戻すものではありません。9月の頭に、お盆の前と同じところまで行けていれば十分です。焦らせないことも、離れている家族にできることの一つです。

電話を一本かけること。予定を減らさないこと。順番を守ること。距離があっても、できることは残っています。

不安なときは、いつでも私たちを頼ってください。科学的な視点と、あなたに寄り添う心で、すぐそばで応援し続けます。

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