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【病態別】第11回:延髄出血・梗塞 食べる喜びと見えない危険。嚥下と自律神経の障害と闘うご家族へ
はじめに:むせるのも、熱が出るのも、脳がそうさせているのです 病態別にお話しする連載も、第11回を迎えました。今回は、脳の根元にある生命維持の要、延髄(えんずい)のダメージについて取り上げます。 厳しいリハビリを懸命に乗り越え、待ちに待った退院の日を迎えることができた。 しかし、家に帰ってからの生活の中に、ご家族にとって非常に緊張を強いられる、危険がいくつも潜んでいます。 お茶を飲むとむせ込む、お風呂に入る時温度がわからない。 そして、夏の暑い部屋にいると急に高熱を出し、冬の寒い部屋では極端に体温が下がっていく。 どうしてこんなにむせるの。なぜただ部屋
3月23日


【病態別】第10回:後頭葉出血・梗塞 見えない半分と生きる。不安に涙するご本人とご家族へ
はじめに:大げさではありません。本当に見えなくて、心細いのです 病態別にお話しする連載も、今回で第10回を迎えます。 今回は、頭の後ろ側にある脳の領域、後頭葉(こうとうよう)のダメージについて取り上げます。 リハビリ病院で訓練を重ね、無事に退院の日を迎えることができた。 病院では見えない側を意識する練習をしっかり行い、ご本人も自分は右半分が見えにくいという自覚を持っています。 それなのに、いざ実際の家に帰って生活を始めると、病院ではできていたはずの動作でエラーが増えていきます。 狭い廊下で同じ側の壁や家具に肩をぶつける。 食事の時も、お皿の片側にある
3月12日


【病態別】第9回:側頭葉・前頭葉出血・梗塞(左側) 言葉が通じない?見えない壁と闘うご家族へ
はじめに:言葉を忘れたのではなく、翻訳機が休業しているのです 病態別にお話しする連載の第9回目は、言葉の壁となる失語症を引き起こす、左側の側頭葉(そくとうよう)や前頭葉のダメージについて取り上げます。 手足のリハビリを頑張り、無事に退院を迎え、一緒に家に帰ることができた。 それなのに、いざ生活の中で会話をしようとすると、決定的な違和感に直面します。 言いたいことが言葉にならない。相手の話しかけている意味が分からない。 言葉のキャッチボールが成立しないという見えない壁の前に、ご家族は深い悲しみと孤独を抱えることになります。 どうして話が通じないの。あ
3月9日


【病態別】第8回:前頭葉の出血・梗塞 性格が変わった?見えない障害と闘うご家族へ
はじめに:怠けているのではありません。脳がそうさせているのです 病態別にお話しする連載の第8回目は、おでこの奥にある大きな脳の領域、前頭葉(ぜんとうよう)のダメージについて取り上げます。 手足の麻痺は少しずつ良くなり、無事に退院の日を迎えることができた。 それなのに、家に帰ってからの様子がなんだかおかしい。 一日中ぼーっとテレビを見ているだけで、自分からは何もしようとしない。 ちょっとしたことで急に激高し、大声を荒げる。 これまで当たり前にできていた料理の段取りが全く組めず、パニックに陥る。 まるで別人のように性格が変わった姿を見て、ご家族は深く傷つ
3月6日


【病態別】第7回:頭頂葉出血・梗塞(右側) 見た目は元気なのに左側だけぶつかる。空間が消える落とし穴
はじめに:不注意ではありません。本当に見えていないのです 病態別にお話しする連載の第7回目は、 頭頂葉(とうちょうよう)のダメージで起こりやすい、 半側空間無視(はんそくくうかんむし)について取り上げます。 この障害には、非常に恐ろしい落とし穴があります。 それは、手足の麻痺がほとんどなく、 言葉も普通に話せるケースが多いことです。 はたから見れば、すっかり元通りになったように見えます。 しかし、なぜか歩くと左側の壁や家具に何度もぶつかる。 食事の時、お皿の左半分だけおかずを綺麗に残してしまう。 左側から家族が優しく声をかけても、全く気づいて
2月27日


【病態別】第6回:小脳出血(しょうのうしゅっけつ) 力はあるのに、なぜ世界は回るのか?精密機械の故障と、数年がかりのチューニング
はじめに:筋肉はある、でも立てないという恐怖 病態別にお話しする連載の第6回目は、小脳出血を取り上げます。 これまでお話ししてきた脳出血(被殻や脳幹など)では、手足が動かなくなる麻痺が最大の悩みでした。 しかし、小脳出血の患者さんが直面する現実は、それとは全く質の異なる恐怖です。 ベッドの上で手足を動かしてみると、力はある。蹴る力も、握る力も残っている。 これなら歩けるかもしれない。 そう思って立ち上がった瞬間、世界がぐにゃりと歪み、自分の身体がまるで荒波に浮かぶ小舟のように制御不能になる。 これが、小脳出血特有の運動失調(うんどうしっちょう)で
2月27日


【病態別】第5回:放射冠・内包(ほうしゃかん・ないほう) 脳のダメージは小さいのになぜ動かない?情報の高速道路の正体
はじめに:最も納得がいかないと言われる場所 病態別にお話しする連載の第5回目は、放射冠や内包について取り上げます。 病院で、出血した範囲はごくわずかですよ、と説明を受けたのに、実際には手足が全く動かない。 そんな経験をされている方は多いのではないでしょうか。 その原因の多くは、ダメージを受けた場所が情報の通り道である放射冠や内包だからです。 放射冠・内包とは何か:神経の関所 脳の表面(大脳皮質)で作られた、動け!という命令は、一本の束にギュッと集まって首の方へ降りていきます。 ・放射冠:脳の表面から神経が集まってくる扇の要のような場所...
2月12日


【病態別】第4回:脳幹出血(橋出血など)|命のスイッチを再起動し、再び自分の身体を取り戻すまで
はじめに:生命の源、脳幹での出血 連載の第4回目は、脳出血の中でも最も重篤な経過を辿ることが多い脳幹(のうかん)出血を取り上げます。 脳幹は、大脳のさらに奥、首の付け根に近い場所に位置する、親指ほどの太さしかない部位です。 ここには、私たちが人間として生きていくための「根っこ」の機能が凝縮されています。 ここでの出血は、命に関わる大きな事態であると同時に、回復のプロセスも非常に特殊です。 1.片麻痺の常識が通用しない脳幹の特殊性 なぜ脳幹の出血が、これほどまでに重い症状を引き起こすのでしょうか。 通常、脳からの運動指令は延髄(えんずい)の最下部にある錐
1月29日


【病態別】第3回:皮質下出血|見えない障害と向き合い、家族で歩む長期戦の心得
はじめに:皮質下出血とは何か 病態別にお話しする連載の第3回目は、皮質下(ひしつか)出血を取り上げます。 第1回の視床出血、第2回の被殻出血が脳の深い場所での出来事だったのに対し、皮質下出血は脳の表面に近い場所で起こる出血です。 この病態の最大の特徴は、出血する場所(前頭葉、頭頂葉など)によって現れる症状が全く異なる点です。 手足は比較的よく動く一方で、性格が変わったように見えたり、判断力が落ちたり、空間を正しく認識できず物にぶつかったりといった高次脳機能障害が前面に出やすいのが特徴です。 周囲からは一見分かりにくい生活のしにくさに、ご本人もご
1月29日


【病態別】第2回:被殻出血|最も多い脳出血から、どうやって生活の動きを取り戻すか
はじめに:脳出血の約4割を占める被殻出血を知る 病態別にお話しする連載の第2回目は、脳出血の中で最も発症割合が高いと言われている「被殻(ひかく)出血」です。 統計的には脳出血全体の約40パーセントから50パーセントを占めるとされており、リハビリの現場で私たちが最も多く出会う病態でもあります。 被殻という場所は脳の深いところにあり、主に運動のコントロールを司っています。 ここに出血が起きると、反対側の手足に麻痺が出たり、言葉が出にくくなったり、あるいは高次脳機能障害を併発することがあります。 医療的な事実と回復の一般的な流れ まずは、一般的な医療
1月16日


脳梗塞で幻覚・妄想が起こる原因とは?症状の特徴とリハビリ・治療方法を専門家視点でわかりやすく解説
脳梗塞の後遺症と聞くと、手足の麻痺や言語の障害が思い浮かびやすいですが、実は「幻覚」や「妄想」といった精神症状が現れることも珍しくありません。 突然見えないものが見えたり、事実と異なる思い込みが強くなったりすると、本人は大きな不安を抱え、家族もどのように接すればよいか迷ってしまいます。 しかし、これらの症状は脳の損傷によって起こる“高次脳機能の乱れ”であり、適切な理解と対応があれば落ち着いていくことが多い症状です。 この記事では、脳梗塞後の幻覚・妄想の原因、治療・リハビリ、家族の適切な対応方法までをわかりやすく解説します。 脳梗塞と幻覚・妄想の関
1月16日


【病態別】第1回:視床出血|「リハビリの期限」に、あなたの体の可能性を閉じ込めないために
はじめに:なぜ、視床出血の回復には「別のカレンダー」が必要なのか 今日から数回に分けて、脳卒中の種類ごとに、リハビリの現場で私が感じていること、そして知っておいていただきたい大切な事実についてお話ししていきたいと思います。 第1回目は、脳出血の中でも比較的多く、そして非常に複雑な回復のプロセスをたどることが多い「視床(ししょう)出血」についてです。 視床は、脳のほぼ中心に位置する「中継センター」のような場所です。 全身から送られてくる感覚情報や、体を動かそうとする指令、さらには感情や意識に関わる情報までがすべてここを通って、それぞれの専門部署へ
1月7日


小脳梗塞の予後はどう変わる?歩行障害・めまい・後遺症の残りやすさと回復期間を専門的にわかりやすく解説
小脳梗塞は、歩行のふらつきやめまい、協調運動の障害など、日常生活に大きな影響を与える後遺症が残ることがあります。 しかし、小脳は回復力が高い部位でもあり、適切な治療とリハビリを継続すれば、症状が大きく改善するケースも多く見られます。 予後を左右するのは発症後の対応スピードと、生活の中でどれだけ回復を支える習慣を整えられるかです。 この記事では、小脳梗塞の予後を決める要因、リハビリの重要性、日常生活での工夫、そして再発予防までを総合的に解説していきます。 小脳梗塞とは何か 小脳梗塞とは、小脳へ血液を送る血管が詰まることで、小脳の一部が障害を受ける状態
2025年12月14日


「冬の朝、足が突っ張って歩けない…」原因は「異常気象」にもありました。命と生活を守る、寝室とトイレの「温度管理」術
今年の冬は、例年以上に「危険」です 12月に入り、朝の冷え込みがいよいよ厳しくなってきました。 布団から出るのが億劫になるこの季節、脳卒中を経験された方、そしてそのご家族から、決まってこのような不安の声が届き始めます。 「最近、朝起きると麻痺した手足がガチガチに固まっているんです」 「夏場はもう少しスムーズに動けたのに、最近は足が棒のように突っ張ってしまって…」 「もしかして、病気が悪化しているんでしょうか? リハビリが足りないんでしょうか?」 もし、あなたも同じような不安を感じているなら、まずは安心してください。 それは、病気の再発でも、あな
2025年12月14日


「履ける靴」ではなく、「履きたい靴」を。装具ユーザーを悩ませる「靴難民」からの脱出法
はじめに:装具が完成した日、ふと感じる「戸惑い」 「お待たせしました。あなた専用の装具が出来上がりましたよ」 数週間の調整を経て、ようやく手元に届いたプラスチック製の装具。 「これで、もっと安定して歩けるようになる」 「リハビリが前に進む」 そんな希望に胸を膨らませて足を通した、その直後。 ふと、ある現実に直面し、立ち尽くしてしまう方がいらっしゃいます。 「あれ? 私の靴、入らない…」 今まで履いていたお気に入りのスニーカーも、仕事用の革靴も、ちょっとそこまで行くためのサンダルも。 玄関に並んでいる全ての靴が、装具を着けた足には全く入らなくなってしま
2025年12月7日


「免許は返ってくる」ものではない。「勝ち取る」ものだ。脳卒中後の運転再開、その険しい道のりと、2人の男たちの挑戦
ハンドルを握ることは、生きること 「もう一度、車の運転がしたい」 リハビリでこの言葉を聞くとき、私はいつも、その言葉の裏にある、切実な想いを感じ取ります。 それは単に「スーパーに行きたい」「病院に行きたい」という移動手段の話をしているのではありません。 特に、昭和の時代を駆け抜けてきた60代、70代の男性にとって、運転免許証とは、ただの資格ではありません。 それは社会人として一人前であるという「ステータス」であり、休日には家族をいろんな場所へ連れて行った「思い出の証」であり、そして何より、誰の力も借りずに自分の意志でどこへでも行けるという「自由と尊厳
2025年12月4日


「もうこれ以上は良くなりません」と言われても。医学的な「6ヶ月の壁」の正体と、その先にある「筋肉の可能性」
「6ヶ月」という数字に、縛られていませんか? 「発症から半年が過ぎましたね。これ以上の回復は難しいので、これからは今の機能を維持していきましょう」 医師やセラピストから、そんな言葉を投げかけられ、目の前が真っ暗になった経験はありませんか。 あるいは、ご自身でネットを検索し、「脳卒中の回復は6ヶ月でプラトー(停滞期)を迎える」という情報を見て、絶望しているかもしれません。 「私の人生、もうこれ以上良くならないのか…」 もし、あなたがそう思っているなら、私は専門家として断言します。 その絶望は、半分は医学的に正解ですが、あとの半分は、大きな誤解が含
2025年11月20日


「ごめんね」と「ありがとう」の間で、脳卒中後の家族との「新しい関係」の築き方
その「ごめんね」、いつから聞くのが辛くなりましたか? 「ごめんね、また失敗しちゃった」 「ごめんね、いつも迷惑ばかりかけて」 ご本人が、ふと口にする「ごめんね」という言葉。 「そんなことないよ、気にしないで」 「大丈夫だよ」 そう返すあなたの心は、本当に「大丈夫」でしょうか。 最初は優しく受け止められていたその言葉が、いつからか、聞くたびにあなたの心を重くし、イライラさせ、疲弊させてはいないでしょうか。 あるいは、ご本人も。 本当は「ありがとう」と言いたいのに、申し訳なさが先に立ち、「ごめんね」という言葉ばかりが口をついて出てしまう。...
2025年11月18日


目に見えない後遺症と、どう付き合うか? ~「怒りっぽくなった」「忘れっぽい」は、性格ではなく後遺症です~
その「生きづらさ」、誰にも理解されないと思っていませんか? 脳卒中のリハビリと聞くと、多くの人が「麻痺した手足を、もう一度動かすための訓練」を想像します。 しかし、退院後の生活が始まった時、ご本人と、そばで支えるご家族を、手足の麻痺以上に深く、そして静かに苦しめるものがあります。 それが、「目に見えない後遺症」です。 「最近、なんだか怒りっぽくなった」 「大事な約束を、すっぽかしてしまう」 「あんなに得意だった料理の段取りが、全くできなくなった」 「人の話が、頭に入ってこない」 ご家族は、「リハビリを怠けている」「病気を言い訳にしている」「性格が変わ
2025年11月9日


「ただいま」の次に目指す、「いってきます」。〜脳卒中後の「復職」という高い壁を越えるために〜
あなたの「いってきます」を諦めないために 「退院おめでとうございます。ご自宅での生活は送れるようになりましたね。」 リハビリ病院でそう言われ、自宅の玄関をまたいだ時、あなたは「ただいま」という言葉と共に、どれほどの安堵を感じたことでしょう。 そして、それを支えてこられたご家族も、どれほど肩の荷が下りたことか、想像に難くありません。 しかし、その安堵も束の間。ご自宅での生活に少しずつ慣れてきた頃、あなたの心には、病院にいた時とは比べ物にならないほど大きく、重たい不安が、再び湧き上がってきてはいないでしょうか。 それは、自分はもう一度「いってきます」
2025年10月31日
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